忘れて、思い出して、知る
「真瀬さん。捜査するなとは言いません。ですが、自分の限界くらい把握しといてください。それができないなら、休めって言ったら休んでください。いいですか?」
「……おう」
資料を読みながらした返事は、あいまいだった。
栞は本当にわかっているのか、不安に思ったが、言い過ぎもよくないと思い、それ以上は言わなかった。
自分が取り調べしたため、遥は軽く資料に目を通すだけだった。
「妃さんたちはいつ帰ってくるんだ?」
「そろそろ帰って来ると思います。心配しなくても取り調べするのは真瀬さんですから、今はおとなしく休んでてください」
そう言われた遥は、部屋の隅にある冷蔵庫からペットボトルのコーヒーを取り出した。
「岡本、りんごでいいか?」
「はい。ありがとうございます」
二人はほぼ同時にキャップを開け、飲んだ。
それから五分も経たないうちに、律から連絡が来た。
その連絡を聞いて、遥は取調室に直行した。
栞もあとに続いて向かう。