忘れて、思い出して、知る


「久しぶりだな、寺崎大地」



息を整えて入った遥は、今までとはまるで別人のようだった。


大地は一週間前と変わらず、遥を挑発するような態度を取る。



「あれ、また同じ刑事さんなの? つまんないなあ」


「黙れ。やはりお前が犯人だったんだな。もう逃げられないんだ。そのつまらない演技はやめて、すべて話したらどうだ」



そのセリフで、大地の顔つきは一瞬で変わった。



「お前になにがわかる。うまいこと会社を経営しようと思ったら裏でやりくりしないと成功しないんだよ。社員は痛めつけないと俺に従わない。どっかで他人の協力が必要になってくる。汚いやり方でやって、なにが悪い」



遥は怒りに任せ、開き直った大地の胸倉を掴む。



「だからって詐欺や薬物販売、暴力をしていいって理由にはならないんだよ。自分の会社守るために、人の命を奪うな!」


「なんだ。そこまでばれてんのか……よっ」



大地はそう言いながら遥の右頬を殴った。


その拳は意外と重く、遥は倒れこんだ。


大地はそんな遥を嘲笑し、偉そうにパイプ椅子に座った。

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