忘れて、思い出して、知る
「まあ結構楽しかったぜ。俺にばれてないとか思いながら証拠集めてるっての聞いて。ただ俺の手のひらの上で転がされてただけなのに」
大地は全てを馬鹿にしたような笑みをやめない。
「にしても、捕まるなんて思ってなかったな。津川だろ。あいつは使えると思ってたんだけどなあ。こんな簡単に話すとか俺の見込み違いだな」
麻友の裏切りに、大地は腹を立てていたらしい。
麻友を恨む顔に、遥は背筋が凍る。
「ま、苺たちのおかげで楽しい時間が過ごせたし、いいや。なあ刑事さん。俺、どうなんの」
「知るか。お前の処分は一課が決めるからな。とりあえず一発殴らせろ」
遥は力強く拳を握っている。
遥の目を見た大地は、怯えているようだった。
「なんでだよ。俺、あんたに殴られる筋合いねーよ」
「じゃあ私ならいいですか」
栞が取調べ室の中に入ってきて、大地を睨んだ。
「いやいや、お嬢さんも一緒だよ?」
遥を殴っておきながら、自分が殴られずに済むようにことを進める大地。
姉の命を奪われた栞は、それが許せなかった。