忘れて、思い出して、知る


「まあ結構楽しかったぜ。俺にばれてないとか思いながら証拠集めてるっての聞いて。ただ俺の手のひらの上で転がされてただけなのに」



大地は全てを馬鹿にしたような笑みをやめない。



「にしても、捕まるなんて思ってなかったな。津川だろ。あいつは使えると思ってたんだけどなあ。こんな簡単に話すとか俺の見込み違いだな」



麻友の裏切りに、大地は腹を立てていたらしい。


麻友を恨む顔に、遥は背筋が凍る。



「ま、苺たちのおかげで楽しい時間が過ごせたし、いいや。なあ刑事さん。俺、どうなんの」


「知るか。お前の処分は一課が決めるからな。とりあえず一発殴らせろ」



遥は力強く拳を握っている。


遥の目を見た大地は、怯えているようだった。



「なんでだよ。俺、あんたに殴られる筋合いねーよ」


「じゃあ私ならいいですか」



栞が取調べ室の中に入ってきて、大地を睨んだ。



「いやいや、お嬢さんも一緒だよ?」



遥を殴っておきながら、自分が殴られずに済むようにことを進める大地。


姉の命を奪われた栞は、それが許せなかった。

< 110 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop