忘れて、思い出して、知る


「お姉ちゃんはあんたにたくさん暴力振るわれてたのに、あんたが無傷なのは嫌なの……!」



栞の目には悔し涙が浮かんでいる。



「あんた苺の妹? 聞いたことないんだけど」


「そりゃそうよ。お姉ちゃんは私の存在をなかったことにしてるんだから」



大地は栞が言っていることが、理解できなかった。



「とにかく殴らせてよ。一回でいいから」


「栞、落ち着け」



いつの間にか隼人が栞の後ろに立っていた。



「どうして!? お姉ちゃんと同じ目に遭わせるだけなのに!」


「そんなことして苺が喜ぶとでも思ってんのか」



栞は俯いて、首を振る。



「自分のせいで妹が罪を犯したら苺の努力はすべて無駄になる。それをわかってやれ。いいか、栞。お前は苺のようになるんだ」



隼人が栞の頭に手を置くのと同時に、栞は涙を流した。


その栞の泣き声が、事件の終わりを告げた。


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