忘れて、思い出して、知る
ルール違反
それから一ヶ月が経った。
あの日以来、誰もあの事件に触れようとはしなかった。
「声がかからない」
律が真顔で、つまらなそうに言った。
すると八課のドアが勢いよく開けられた。
「玲斗! そんなに慌ててどうしたの?」
開けた人物は、栞の知り合いだった。
「栞、知り合い?」
その男性の名前を呼んだ栞に、律が聞いた。
「吉良玲斗、私の同期で一課に所属しています」
一課と聞いて、律と宙は顔を顰めた。
しかし玲斗はそれに気付かぬ振りをし、頭を下げた。
「八課のみなさん、力を貸してください」
予想外の言葉に、全員頭に疑問符を浮かべる。
一課に限ったことではないが、「ゴミ処理場」と言われるから、「力を貸してほしい」と言われるとは思いもしなかったからだ。