忘れて、思い出して、知る
「あの吉良って男。岡本と一緒に捜査したいとか言ってたけど、わざと私たち八課を捜査本部に呼んだ。そうでしょ?」
律の目は鋭かった。
宙も遥も。
三人同じような目で隼人を見る。
隼人はさすがと言わんばかりに、苦笑する。
「やっぱお前らは気付いてたか。お前らの言う通り、吉良玲斗はなにか企んでた。なには聞き出せなかったが、わざと八課を呼んだのは間違いない」
律がやっぱり、と呟く。
「まあ栞じゃ一生気付かないだろう」
「人を疑うってことを知らないですもんね、彼女は」
宙の言葉に、隼人は否定しなかった。
「久しぶりの捜査会議は嬉しかったかもしれないが、今後は顔を出さないようにしてくれ」
「……了解」
隼人の指示に、三人はそろって肩を落とした。
「悪いな。でも、これだけは言い切れる。一か月後にあの事件は八課が捜査することになる」
宙と律は口角を上げた。
遥は大げさに笑わなかったが、わずかながら喜んでいた。
それから一か月、栞は一度も八課に顔を出さなかった。
そして、隼人が言ったように、八課に声がかかった。
会議室には遥一人が行った。
そして資料を見ると、あの日と同じようにマイクを握った。