忘れて、思い出して、知る
「一週間経ってないが、この事件はもう八課に回してくれ。お前ら無能と捜査するのはただの時間の無駄なんだ」
この一言は挑発する言葉に間違いなかった。
だが、誰もなにも言わない。
それだけ今回の事件は難解だったのだ。
そのため、八課のみで捜査することを認めざるを得なかった。
数時間後、その事件についての資料、段ボール二十箱分くらいが八課の部屋に持ってこられた。
「……なんか多くない?」
部屋の隅に追いやられた律が、鬱陶しそうにつぶやく。
「……足の踏み場もないな」
宙も驚きを隠せなかった。
「これだけ資料があるのはおかしい。二人とも、今日のとこは帰ってくれ。俺が徹夜で資料の整理をしておく」
たくさんの資料を目にして、遥はやる気を出したらしい。
そしてそう言って、一番近くにある段ボール箱を開け始めた。
律も宙も手伝おうと思ったが、こうなった遥を邪魔することは気が引けた。
二人は言われるがままに部屋を後にした。
「ねえ、岡本のとこに行かない?」
「ですね。今のうちに戻ってもらえるように説得しとかないと、遥が倒れるのも時間の問題だ」
そして二人は、その足で栞の家に向かった。