忘れて、思い出して、知る
岡本沙也加
白塗りの壁で、二階建ての一軒家のインターフォンを鳴らす。
玄関から出てきたのは隼人の妻、沙也加だった。
長い髪をサイドに結び、大きな瞳をしている。
「栞さん、いますか?」
沙也加を見たとたん、宙は沙也加の手を取って尋ねた。
いきなり手を握られた沙也加は、戸惑う。
すると、律は力任せに宙の頭を叩いた。
「なんで手を握るのよ。警視長の奥さん口説くなんて、どれだけバカなの」
「栞ちゃんの同僚さんよね?」
しかし、沙也加は何事もなかったように穏やかに微笑んだ。
彼女を見た二人はなぜか照れ気味にうなずいた。
「そうだったの。さ、早く入って」
沙也加は嬉しそうに宙たちを招き入れた。
二人はリビングに通され、半ば強引に椅子に座らされた。
「今コーヒーしかないんだけど、砂糖とミルク、いる?」
「俺はなくていいです」
「私は欲しいです」