忘れて、思い出して、知る


「リビングに来なさい」



栞はこの沙也加を知っているらしく、ひどく怯えていた。



リビングの空気は重たかった。


沙也加の反対側に椅子を三つ横に並べて左から宙、栞、律の順に座る。



「あなたのわがままで、みんなに迷惑をかけてることはちゃんとわかってる?」



栞はあまりの恐怖で声が出ず、うなずくことしかできなかった。



「八課のみんなが、どうして栞にあんなこと言ったか、わかる?」



首を横に振る。


沙也加は律のほうを見て、説明しなさいと指示した。



「私たちが吉良玲斗が騙してるって思ったのは、私たちが会議室に入って、たくさんの人にバッシングされたときに吉良が笑っていたから。心配する顔じゃなくて、私たちをバカにするような顔をしていたから」



玲斗の顔なんて見ていなかった栞は、納得のいかない顔をする。



「岡本と一緒に捜査したいんだったら、そんな顔はしないはず。でも、吉良はそれをしなかった。だから、岡本と捜査する気なんてないんだって思った」



律はそこまで言うと、言葉に迷った。


だから、代わりに宙が話し始めた。

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