忘れて、思い出して、知る
栞が落ち着いたときには、時刻は午後六時を過ぎようとしていた。
「じゃ、俺らそろそろ帰ります」
宙と律は荷物を持って立ち上がった。
沙也加は一緒に夕飯を食べようと誘ったが、二人は断り、玄関に向かった。
栞は二人の後をついて行く。
そして、二人がドアを開けると同時に頭を下げる。
「ありがとうございました」
二人は振り返って笑顔で言った。
「また明日」
「遅刻すんなよ」
顔を上げると、二人とも怒っている様子はなかった。
ただ、栞を励ましに来ただけらしい。
「はい」
二人の気持ちを知った栞は、いつもの笑顔で答えた。