忘れて、思い出して、知る
「なるほど……って、真瀬さん徹夜したでしょ。後は私がやりますから、休んでください」
栞は遥が手にしている資料を取った。
だが、遥はそれをすぐに取り返す。
「最後までやる」
しかし栞はまた取り、幼い子を叱るように遥に言った。
「なに言ってるんですか。ここのエースが倒れたら困るって言ってるんです。やり遂げたいのはわかりますけど、ここはおとなしく休んでください」
二人は睨み合う。
数秒後、遥はため息をつき、視線をそらした。
「わかった。じゃあ、いる資料に一通り目を通して、それから資料の分別をしてくれ。間違っても資料を捨てるようなことはするなよ」
「しませんって。さっさとおとなしくそこのソファの上で休んでください」
遥は若干ふらつきながら、ソファに寝転がった。
一晩中、段ボール十箱くらいの資料と向き合っていたくらいだ。
言うまでもなく、遥はあっという間に寝入った。
栞は手首につけていた髪ゴムで髪を束ね、「要」と書かれた段ボールに入っている資料に手を伸ばした。
一時間くらい経ったころだろうか。
律が出社してきた。