忘れて、思い出して、知る
「おはよー。あれ、なんで岡本が資料の振り分けしてんの? 真瀬は寝てるし」
律はいまいち状況を飲み込めず、出入り口で足を止めた。
「徹夜していたみたいなので、休んでもらいました」
律は今日もなさげに返事をする。
「ってか、真瀬よくから仕事取り上げたね」
栞は眼鏡を外し、目頭を押さえた。
「取り上げただなん人聞き悪いこと言わないでくださいよ。私はただ、八課のトップが倒れないようにと思って、寝かせたんです」
律は微笑み、何度かうなずいた。
そして自分のデスクに荷物を置き、栞の向かい側に座った。
近くにある資料に手を伸ばす。
「これ、一か月前に私たちが会議に出たときの資料だよね?」
「いえ、ここにある資料は一カ月前同時期に起きた五つの事件の資料なんです。だから、これだけ大量の資料が八課に一気に送り込まれたんです」
栞は眼鏡をかけなおし、作業を再開する。
「一課のみなさんはどうやらこの事件を無関係と見て、同時に四つの捜査本部を設立されたようです」
「じゃあこの四つの事件は関係あるってこと?」