忘れて、思い出して、知る
栞はまだ整理できていない段ボールに手を伸ばし、読み込んでいく。
「その説明は、真瀬さんに聞いたほうがいいですよ。それに、火神さんがまだ来てないようですし」
「そっか。じゃ、私はなにかスイーツでも買いに行ってこよっかな」
律はそう言って、部屋を出て行った。
またこの部屋が静まり返る。
さらに一時間が経ち、律と宙がなにやら騒ぎながら部屋に入ってきた。
「ただいまー。ねえ、岡本聞いてよ。この男ね、私が持ってる袋を見たとたん、よこせって言ってきたの」
栞のほうはというと、資料の振り分けが終わったらしく、パソコンで作業をしていた。
画面から顔を上げ、右手の人差し指を立てて唇に当てた。
「二人とも静かにしてください。真瀬さんが起きちゃいます」
まさにその言葉を合図にするかのように、遥が目を覚ました。
栞が二人を睨むと、律と宙は申し訳なさそうに肩をすくめる。
遥は寝ぼけながらも体を起こす。
「岡本、終わったか?」
「はい、一通り。真瀬さん、寝起きですけど、会議始めますか?」
必要な資料が入った段ボール五箱を、テーブルの上に置きながら問う。