忘れて、思い出して、知る
永人は話すかどうか迷った。
だが、四人にまっすぐに見つめられ、逃げることをやめた。
逃げられる気がしなかったとも、言えるかもしれない。
「火神。この間、お前に絶対に捜査するなって言った事件があるだろ。その資料、持ってこい」
急に名前を呼ばれた宙は、すぐに反応できなかったが、言われた通りに捜査ファイルを取ってきた。
「これですか?」
隼人は宙から捜査ファイルを受け取り、中身を確認した。
「ああ、これだ。これは寺崎苺、旧姓花村苺の両親が殺された事件だ。犯人がまだ捕まっていないからここに置かれているんだが、俺がこれを捜査するなと言ったのは……」
隼人はそこまで言って、言葉を詰まらせた。
しかし四人は黙ったまま、彼の次の言葉を待つ。
「桃に、この事件のことを思い出させたくなかったからだ」
全員、隼人のこの一言が理解できなかった。
「警視長、なに言ってるんですか。ここに花村桃はいませんよ」
宙が笑いながら言う。
うつむいた隼人は小さく「いる」と言い、震えながら人差し指を上げた。