忘れて、思い出して、知る

それを最初に壊したのは栞で、独り言を呟いた。



「……そんなこと言われてもはいそうですかってならないよ……」



そして、部屋を飛び出した。


誰も追いかけようとしなかった。


彼女になんて声をかければいいのか、わからなかったからだ。



「警視長、そのファイル貸してください」



遥はホワイトボードを裏返しながら言い、隼人から二十年前の殺人事件のファイルを受け取った。


そして立ったまま資料を読み始めた。



「真瀬、なにする気？」



律は真剣に資料を読んでいる遥に、不思議そうに聞く。



「四人の女性殺人事件を置いて、先にこの事件を捜査する。犯人を捕まえられなくても、解決することに意味があると思うし。それに、俺たちにできることはこれしかない」



それを聞いた律と宙は顔を見合わせ、微笑んだ。



「お前ら……」



隼人はうっすらと目に涙を浮かべている。


それを見た律は隼人の背中を叩く。