忘れて、思い出して、知る
「警視長、感動してる場合じゃないですよ。警視長も一緒に捜査するんですから」
「そうだな。じゃあ先に始めててくれ。助っ人呼んでくる」
隼人はそう言って外に出た。
律はドアを見つめる。
「助っ人って誰なのかな」
「俺は美人な女性がいいなあ」
「お前の頭の中はそれしかないのか」
遥は資料に目を通しながら、呆れたかのように言う。
「うるさい。大体、真瀬は生意気なんだよ。普段はなにもしゃべんねえくせに事件となると性格変わって。俺のほうが年上だって忘れてるだろ。年上の人は尊敬するもんなんだよ」
宙の言葉を聞いて、遥は資料から顔を上げた。
そしていつもの無表情で……というより、心の底から不思議そうな顔をする。
「違うだろ。尊敬するのは自分より優れた能力がある人間のみ。年上だからって尊敬する必要性はない。よって、お前は尊敬するに値しない」
「あ、またお前って言った! ありえねえ。ねえ、律さん!」
律は子供のようにわめく宙を、冷たい、鬱陶しそうな目で見た。