忘れて、思い出して、知る
「遥? 女の子みたいな名前ね」
「よく言われます」
沙也加は穏やかな空気を放つ。
少しずつ、遥は律の言葉を信用する。
「遥君って呼んでもいい?」
「……どうぞ」
そして徐々に苦手な部類の人だと感じ始める。
「ねえ、紗香さん。どうしてここに?」
それに気付いたのか、律が沙也加に尋ねる。
沙也加は遥と繋いだ手を離し、ソファに腰かけた。
「私、元刑事だもん。でも、栞……桃ちゃんを預かるってなって辞めたの」
「ああ、だから怒ったらあんなに怖いんですね」
納得したかのように言う律に対して、沙也加は苦笑した。
「それ関係あるかなあ……まあそんなことより。あの事件の捜査、やるんだよね」
律と遥は真剣な顔で、頷く。
「よし、じゃあみんな下の名前で呼んでね。栞ちゃんのことを岡本って呼んでるみたいだし」