忘れて、思い出して、知る
なんて言ったそばから、沙也加はなにかを考えている。
「沙也加さん? なにを考えているんです?」
律はそんな沙也加の顔を覗く。
「いやね、せっかく一緒に捜査するのに、距離がある呼び名は嫌だなあと思って」
沙也加はそう言って、また悩み始めた。
すると、律が思いついたように手を叩く。
「サヤはどうですか? ここにいるメンバー、二文字で呼べるし、ちょうどよくないですか? 真瀬、律……桃」
「よくない。八課のメンバーは真瀬、律、宙。で、桃だろ」
部屋の隅で固まっている宙が、口をはさんだ。
律は冷たい視線を、宙に送る。
「あんたを八課のメンバーにしたくないって私の思い、わかって」
「わかりたくねーよ。もうかれこれ十年以上の付き合いだろ」
宙の言葉を聞いて、律は顔をしかめた。
そしてなにも言わないまま、沙也加のほうを見た。
「どうですか?」
「うーん。私は真瀬、よりもハル君って呼びたいかな」