忘れて、思い出して、知る


彼は身長180センチを超え、スタイルがいい。


だが、ファッションには無頓着で、自分が動きやすいと思う格好しかしない。



また、口数が少なく、自分が興味を持ったことにしか、本気を出さない。


特に事件のことになると厄介で、性格が大きく変わる。


そうなった遥の相手をするのは相当面倒で、誰もが嫌がる。



「みなさん、あまり余計なことしないでくださいよ」



五十センチ先を歩く三人の背中に文句をぶつけるのは、岡本栞。


数ヶ月前に八課に配属されたばかりだ。



ストレートロングの黒髪に黒縁メガネをかけた、見た目通りの真面目。


彼女は人一倍正義感の強い女性に成長した。



少し人を疑うことを知らないところはあるが。



栞の言葉を聞いた三人は急に立ち止まり、振り返った。


三人とも栞よりも二十センチ以上背が高いため、自然と栞を見下ろす。



自分よりも背の高い人に見下ろされるというのは恐ろしいところがあり、威勢のいい栞も、怖気付く。



「余計なことをするつもりはない。俺は一課の無力さを馬鹿にするだけだ」



それに追い打ちをかけるように、遥の低い声。

< 7 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop