忘れて、思い出して、知る
寺崎苺
数十分後、栞はアパートの駐車場に車を停めた。
「寺崎苺が住んでいたのはここの二階。まずは大家さんに話を聞いて、後は近所の人に聞けばいいね。栞ちゃん、メモ取ってくれる?」
沙也加は寒さで丸まりながら言った。
「わかりました。早く行きましょう」
並んで歩く二人は親子ではなく、バディのように見える。
管理室に入ると、そこにいたのは中学生くらいの男の子だった。
「警察がなにか用?」
彼はパイプ椅子に座り、ゲームをしながら不愛想に言った。
「ここに住んでた寺崎苺について聞きたいんだけど……大家ってあなたじゃないよね?」
沙也加が聞くと、彼は動きを止めた。
「またかよ。そいつのことは一か月くらい前に、警察に根掘り葉掘り聞かれたんだけど」
栞は不服そうに言う彼のそばにしゃがむ。
「何回もごめんね。でも、私たちはその人のことが知りたいの。より詳しく知って、事件を解決させたい」