忘れて、思い出して、知る
「そしたら、苺ちゃん泣き出しちゃって。みんなのお姉さんが泣いちゃったもんだから学園内は大騒ぎ。そんな中で私は苺ちゃんを学園長室に入れた。すると、安心したのか、泣いた理由を話してくれたの。桃に会いたいって」
その言葉に、栞は息を呑む。
改めて、自分が苺を苦しめていたのだと思う。
「私はなにも知らなかったし学校の友達かと思って、会いに行けばいいって言ったの。そしたらさらに泣いちゃって。自分は桃に悪いことした、やっぱり桃のそばにいてあげるべきだったって」
栞の頬には自然と涙が流れた。
沙也加はなにも言わずに栞の頭を撫でた。
「そのあと苺ちゃんになにもしないでって言われたんだけど、どうしても苺ちゃんの後悔を取り除いてあげたかった私たちは、苺ちゃんが言う『桃』を捜した」
その行動力に、栞と沙也加は驚く。
見ず知らずの人を、素人が見つけることなど、普通に考えて出来るとは思えない。
だから、そういう考えには至らない。
それでも、そうしたということは、それだけ苺のことを大切に思っていたのだと、直接言わなくても伝わってくる。
「内緒でやってたつもりなんだけど、苺ちゃんにばれちゃって。そしたら苺ちゃん、泣きながら言ったの。花村桃はもういない、いるのは岡本栞だ。岡本栞の人生を邪魔するなって」