忘れて、思い出して、知る


奈緒が話す途中に、鼻をすする音が聞こえる。



「そんな苺ちゃんを見てすぐにわかった。桃って子が大切で大好きなんだって。苺ちゃんの涙はそれっきり。だから、簡単に忘れられなかったのよね」



栞は、想像出来ないほど、苺に大切にされていたとわかると、胸が締め付けられる。



「でもよかった。苺ちゃんの妹さんがここに来て、苺ちゃんのこと聞いてくれて。苺ちゃん、きっと喜んでる。桃が戻ってきたって」



そう言って振り返った奈緒の目にも、涙が浮かんでいる。


栞は自分の涙を拭い、まっすぐ前を見つめた。



「私、絶対に姉を殺した犯人、捕まえます」



栞の頼もしい姿を見た奈緒は、嬉しそうに微笑む。



「頑張ってね。協力できることがあったらなんでもするから」


「はい!」



二人は元気よく返事をし、学園を後にした。

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