忘れて、思い出して、知る
「でも、姉は姫野学園に送った。それは自分の娘がいるから。つまり、この資料は私に届けたいけど、パスワードは娘関係ってこと」
「でもその娘について、なんにも調べてないよ、私たち」
不安そうに言う沙也加に対して、栞は余裕の笑みを浮かべる。
「大丈夫です。一応姫野沙羅についての資料も、借りてきましたから」
全員栞の成長に圧巻し、言葉が出てこなかった。
「でも、なにがパスワードになってるんだろう……このタイプだったら数字であることに間違いないのに……」
栞は頭を抱えた。
その姿はいつもの栞そのものであったため、みな内心ほっとした。
「誕生日とかはもう入力したの?」
律は沙羅についてのノートをめくりながら、尋ねる。
「それが、誕生日がわからないんです。門の近くにゆりかごに入れられて、置かれてただけみたいで」
栞は読み込んで、覚えた情報を話す。
「そして、そのそばにあった紙きれには『沙羅』としか書いてなかったそうです。だから、その子が発見され、姫野学園に来たその日を、その子の誕生日にしたみたいなんです」