【短編】こたつとみかん
こたつとみかん
12月30日。
今年もこの日がやって来た。
私は、勉強机の上に置かれた卓上カレンダーをジッと見つめる。
あいつが帰ってくる。
正直、1週間前くらいからそわそわしていたし、地味にお菓子を食べるのをやめたりした。
1週間じゃ効果が出るわけないことくらいわかっているのに。
あいつがこの町から居なくなって3年。
だけど毎年、この時期だけは帰ってくる。
一年のうちのたった1週間。
あんな奴にこんな感情を抱いているなんて悔しいけど、仕方がない。
「美柑(みかん)!ちょっと手伝って!」
一階から不機嫌なママの声がした。
毎年この時期は、私の家にいとこや親戚が集まる。
そのために、ママやおばあちゃんたちは食事作りに大慌てだ。
「はーいっ」
声を伸ばして、ゆっくりと立ち上がってからキッチンのある一階へと向かった。
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