【短編】こたつとみかん
毎年シミュレーションしてるのに、やっぱりうまくいかない。
もともと、品のある女の子って感じじゃないし、料理とかお裁縫は断然苦手だし、アプローチとかこういうの得意じゃないのかも。
そもそも、私とあいつはそういう関係じゃないわけだし。
私が勝手に…。
好きになっただけだから。
ほんっとムカつく。
御膳に並べられた食事を持って、居間へと向かう。
久しぶりに会えたのに。
一年ぶりの私の顔を見ても驚いた表情1つしないんだもん。
なんなのよ。
これでもこの一年、必死にメイクの勉強頑張ったりしていたんだから。
少しでも…彼に追いつきたくて。
広い居間が2つあるもともとはひいおじいちゃんのこの家。
大人たちは1つの居間でもうお酒を飲んでおしゃべりを楽しんでいた。
あいつはというと…今年も前と同じようにみんながいる居間より少し小さい居間に、背中を丸めてコタツに座っていた。
後ろ姿だけで、キュンとしてしまう自分がまたバカみたいで悔しい。