同性愛者。
プロローグ。

カラン、とドアが開く音がした。


「いらっしゃい」

「お久しぶりです。お義父さん…」


小さな声で私は言う。

お義父さんは眉間に皺を寄せて、私を見ていた。


私が訪れた場所は、小さな和食店。

薄暗い明かりが点々として、テーブルと椅子は可愛くデザインされていた。

今、客の姿は見当たらない。


「今更、なんの用事だ?」

「いえ。……今日は咲の誕生日と…命日ですから……」


お義父さんのセリフに、私は小さく頷いて答える。


今日は大切な人の
死んだ日。


「来なくていい」

「いえ。来ます。来年も再来年も」


きっぱりと答える私を、お義父さんは睨んでいた。
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