キミがくれたコトバ。
9
「みんな。ちょっと買出しに行って欲しいんだけど、いいかな……?」
保健室登校が始まって、1週間が経った頃、瞳先生が、私たちにそう頼んだ。
「学校に登校してる時間なのに、買出しなんて勝手に行ってもいいんですか?」
颯磨くんが言う。
「ふふふ、バレなきゃいいのよっ。」
「あー!ブラックひとみんだ〜!」
大輔くんが瞳先生を指さして言う。
「嘘よ。さすがに学校がある日は駄目だから……、明日。休みでしょ?行ってくれたら助かるんだけど……。」
「あ、あの!僕、行きます……!!」
意外にも、京くんは乗り気だった。
「俺も行くよ!みんな行くよな?な!?」
大輔くんは、当然のように乗り気で、結局は4人で行くことになった。
「本当!助かるわ〜。じゃあ明日、これを4人で買ってきてくれるかしら?」
瞳先生は、私たちにメモを渡した。
「よぉーし!俺がこのメモ持っとくな!」
「大輔、お前じゃ確実に無くすだろ?僕が持っておくからいい。」
颯磨くんが、メモを横取りする。
瞳先生は、クスクス笑いながら、その様子を眺めている。
「そうね。大輔くんより颯磨くんに持ってもらっていた方が、安心。」
「ひとみん酷〜い!ちぇっ、持ちたいだけじゃん。」
いや、持ちたいだけなのは、大輔くんの方だと
思うけど……。
「じゃあ、お願いね。」
「はい!」
何か楽しそうだな。でも……、休みの日に外に出るってことは、私服か……。
ヒール、また履かなきゃな。
もう足は完治してるから、大丈夫だと思うど……。
─次の日─
集合場所には、何故か私と颯磨くんしかいなかった。
「あれ?みんなは?」
「大輔からは、寝坊で来られないって聞いた。」
寝坊!?
やっぱり、メモを大輔くんに持たせなくて良かった。
「京くんは?」
「あいつは、急に体調不良になって。」
「えっ!?大丈夫なの!?」
「うん、まぁ、瞳先生が言うには大丈夫だって。」
乗り気だった2人が来れなくなっちゃうなんて。
しかも、大輔くんはまだしも、京くんは、可哀想……。
来たかっただろうな。
ってことは……。
…………。
うん?
ってことは……、颯磨くんと2人!?
なんか……、どうしたらいいのやら……、うーん。
いや、別に普通で良いよね!うん!
「じゃあ、行くか。」
「うん。」
その瞬間。
わっ!!
やっぱ慣れてないのかな?
それとも、最近はヒールをあまり履いていなかったから?
歩き出してそうそう、転びそうになった。
「っと!危ない!」
颯磨くんに支えられる。
「わ、ご、ごご、ごめん!!」
「大丈夫か?」
私はコクコクと首を縦に振る。
やっちゃった……。
でも、それにしても颯磨くん、私の前を歩いていたのに、どうしてで転びそうなことに気がついてくれたんだろう。
健吾の時は……、
慌てて首を振った。
もう忘れよう。颯磨くんと何か話せば、忘れられるのかな……?
しかし……、会話が……無い……。
2人で話すのはベッドの時以来だもんなぁ。
「結構、歩くな。」
颯磨くんが、ボソッと呟いた。
「歩く?」
「うん。買い出しメモを見て、買いに行く店が何軒か、ある程度予想したんだけど、最短距離でも、1時間半はかかるな。」
ん??なんだ、その計算は……。
やっぱり、頭が良いんだなぁ。
「そんな計算までしてきてくれたの?大変じゃなかった??」
「いや、今、計算した。」
い、今!?
「す、凄い……。」
「そうか?」
颯磨くんが首を傾げる。
ああ、この人は、自分が頭が良いって、気づいていないんだな……。
飛び抜けて頭が良いのにそれを少しも鼻にかけない。
尊敬する。
そんなこんなで、私たちは、適度に会話をしながら、商店街を回った。
ー1時間後ー
あ……、足が……。
「それで大輔、大声で叫んだんだよ。」
「へえ!そうなんだっ。大輔くんらしいねー。」
何とか会話を続けているけど、はっきり言って、限界に近い。
まだ慣れてないな、ヒール。
かなり高いのを履いてるから……、あぁ、今日も
帰ったら、絆創膏だらけに……。
でも、あと30分くらいだし、頑張ろう……。
「日奈子、ちょっと来て。」
急に颯磨くんが、目的地とは違う方向に私を連れていった。
「へっ?」
ちょ、足……痛いのに、寄り道……?
……仕方ない。我慢だ、我慢!
連れて来られたのは、人気のない公園だった。
あっ、この公園……、明人くんと別れて、歩道橋から飛び降りようとしたところを、引き止めてもらった人に、連れてきてもらった場所だ。
懐かしい。
ここで健吾とも付き合うことになったんだよね。
……結局、別れちゃったけど。
「ここのベンチに、座って。」
「え?あ、うん。」
私と颯磨くんは、ベンチに腰をかけた。
「それで、靴を脱いで。」
っ………………!
「え、え?」
「いいから。」
私は、言われた通りに、靴を脱いだ。
「それから、靴下も。」
「う、うん。」
もしかして……、気づいてくれたの……?
「やっぱり。」
「えっ?」
「ずっと、無理して履いてたんだろ?」
………………。
何で……?どうして気づいたの……?
気づかれないようにしてたはずなのに。
健吾の時は、何回かデートしたけど、1度も気づかなかったのに。
「大丈夫だって、これくらい……。」
「大丈夫じゃなさそうだけど?」
うぅ……。
颯磨くんが、足の傷に触る。
「痛っ……!!」
「ほら、大丈夫じゃない。」
痛いのも、そうだけど、颯磨くんが一瞬、私の足に触れたことに対して、恥ずかしくて仕方がなかった。
「絆創膏、持ってきたから使って。」
颯磨くんが、ポケットから絆創膏を取り出した。
「あ、ありがとう……。」
私は遠慮なく、その絆創膏を使うことにした。
「実は……、予め、こうなることを予想してた。」
えっ…………!?
「なんで……、分かったの……!?」
「……男の勘?」
勘だけで、そこまで分かるものなのかな……?
「取り敢えず、これ履いて。」
私の前に、可愛らしい靴が置かれた。ヒール……
じゃない、スニーカー。
「これ……、どうしたの!?」
「プレゼント。」
「えっ!?いつ買ったの?」
「さっき。」
さ、さっき!?ずっと一緒にいたのに、全然気が付かなかった……。
「悪いよ、こんなの。」
「いいって。この靴、僕が持って帰るわけにもいかないし。」
まあ、そうだけど……、でも……。
「せめてお金、返すよ!」
「それもいいって。僕が勝手にしたことだし。」
でも……、そんな……。
「ごめんね……、迷惑かけて。」
「そんなことない。楽しかった。」
嘘……だよね……。無理してくれてるんだよね。
「おあびに、私、残りの買い物、してくるよ。」
「大丈夫だよ。もう全部買い終わったから。」
えっ……?
「それより、早く履いて。」
「あ、うん。」
私はプレゼントされた靴を履く。
「可愛い……!しかも、ぴったり……!」
「良かった。」
でも、何で足のサイズが分かったの?
私、身長は低いけど、足のサイズは、みんなと同じくらいで、普通だったら、身長からして、小さい靴を選ぶはずなのに……。
「どうして靴のサイズが分かったの……?」
「靴のサイズくらい、見てれば分かるよ。」
見てれば分かる……!?
やっぱり、頭が良い……。天才だ。
「ありがとう……。本当に嬉しい……。」
「僕も喜んでもらえて、嬉しい。」
本当はヒールなんて最初から履きたくなかった。
今まで履いたこと、なかったし、オシャレとか、特に気にする性格じゃなかったから。
でも、スニーカーを履いたら、一気に背が縮んでしまうから……。
親子だと思われちゃうかもしれないのに……。
それでも、一緒に歩いていいの……?
もしも良いなら、私は……、
凄く救われたよ。
「みんな。ちょっと買出しに行って欲しいんだけど、いいかな……?」
保健室登校が始まって、1週間が経った頃、瞳先生が、私たちにそう頼んだ。
「学校に登校してる時間なのに、買出しなんて勝手に行ってもいいんですか?」
颯磨くんが言う。
「ふふふ、バレなきゃいいのよっ。」
「あー!ブラックひとみんだ〜!」
大輔くんが瞳先生を指さして言う。
「嘘よ。さすがに学校がある日は駄目だから……、明日。休みでしょ?行ってくれたら助かるんだけど……。」
「あ、あの!僕、行きます……!!」
意外にも、京くんは乗り気だった。
「俺も行くよ!みんな行くよな?な!?」
大輔くんは、当然のように乗り気で、結局は4人で行くことになった。
「本当!助かるわ〜。じゃあ明日、これを4人で買ってきてくれるかしら?」
瞳先生は、私たちにメモを渡した。
「よぉーし!俺がこのメモ持っとくな!」
「大輔、お前じゃ確実に無くすだろ?僕が持っておくからいい。」
颯磨くんが、メモを横取りする。
瞳先生は、クスクス笑いながら、その様子を眺めている。
「そうね。大輔くんより颯磨くんに持ってもらっていた方が、安心。」
「ひとみん酷〜い!ちぇっ、持ちたいだけじゃん。」
いや、持ちたいだけなのは、大輔くんの方だと
思うけど……。
「じゃあ、お願いね。」
「はい!」
何か楽しそうだな。でも……、休みの日に外に出るってことは、私服か……。
ヒール、また履かなきゃな。
もう足は完治してるから、大丈夫だと思うど……。
─次の日─
集合場所には、何故か私と颯磨くんしかいなかった。
「あれ?みんなは?」
「大輔からは、寝坊で来られないって聞いた。」
寝坊!?
やっぱり、メモを大輔くんに持たせなくて良かった。
「京くんは?」
「あいつは、急に体調不良になって。」
「えっ!?大丈夫なの!?」
「うん、まぁ、瞳先生が言うには大丈夫だって。」
乗り気だった2人が来れなくなっちゃうなんて。
しかも、大輔くんはまだしも、京くんは、可哀想……。
来たかっただろうな。
ってことは……。
…………。
うん?
ってことは……、颯磨くんと2人!?
なんか……、どうしたらいいのやら……、うーん。
いや、別に普通で良いよね!うん!
「じゃあ、行くか。」
「うん。」
その瞬間。
わっ!!
やっぱ慣れてないのかな?
それとも、最近はヒールをあまり履いていなかったから?
歩き出してそうそう、転びそうになった。
「っと!危ない!」
颯磨くんに支えられる。
「わ、ご、ごご、ごめん!!」
「大丈夫か?」
私はコクコクと首を縦に振る。
やっちゃった……。
でも、それにしても颯磨くん、私の前を歩いていたのに、どうしてで転びそうなことに気がついてくれたんだろう。
健吾の時は……、
慌てて首を振った。
もう忘れよう。颯磨くんと何か話せば、忘れられるのかな……?
しかし……、会話が……無い……。
2人で話すのはベッドの時以来だもんなぁ。
「結構、歩くな。」
颯磨くんが、ボソッと呟いた。
「歩く?」
「うん。買い出しメモを見て、買いに行く店が何軒か、ある程度予想したんだけど、最短距離でも、1時間半はかかるな。」
ん??なんだ、その計算は……。
やっぱり、頭が良いんだなぁ。
「そんな計算までしてきてくれたの?大変じゃなかった??」
「いや、今、計算した。」
い、今!?
「す、凄い……。」
「そうか?」
颯磨くんが首を傾げる。
ああ、この人は、自分が頭が良いって、気づいていないんだな……。
飛び抜けて頭が良いのにそれを少しも鼻にかけない。
尊敬する。
そんなこんなで、私たちは、適度に会話をしながら、商店街を回った。
ー1時間後ー
あ……、足が……。
「それで大輔、大声で叫んだんだよ。」
「へえ!そうなんだっ。大輔くんらしいねー。」
何とか会話を続けているけど、はっきり言って、限界に近い。
まだ慣れてないな、ヒール。
かなり高いのを履いてるから……、あぁ、今日も
帰ったら、絆創膏だらけに……。
でも、あと30分くらいだし、頑張ろう……。
「日奈子、ちょっと来て。」
急に颯磨くんが、目的地とは違う方向に私を連れていった。
「へっ?」
ちょ、足……痛いのに、寄り道……?
……仕方ない。我慢だ、我慢!
連れて来られたのは、人気のない公園だった。
あっ、この公園……、明人くんと別れて、歩道橋から飛び降りようとしたところを、引き止めてもらった人に、連れてきてもらった場所だ。
懐かしい。
ここで健吾とも付き合うことになったんだよね。
……結局、別れちゃったけど。
「ここのベンチに、座って。」
「え?あ、うん。」
私と颯磨くんは、ベンチに腰をかけた。
「それで、靴を脱いで。」
っ………………!
「え、え?」
「いいから。」
私は、言われた通りに、靴を脱いだ。
「それから、靴下も。」
「う、うん。」
もしかして……、気づいてくれたの……?
「やっぱり。」
「えっ?」
「ずっと、無理して履いてたんだろ?」
………………。
何で……?どうして気づいたの……?
気づかれないようにしてたはずなのに。
健吾の時は、何回かデートしたけど、1度も気づかなかったのに。
「大丈夫だって、これくらい……。」
「大丈夫じゃなさそうだけど?」
うぅ……。
颯磨くんが、足の傷に触る。
「痛っ……!!」
「ほら、大丈夫じゃない。」
痛いのも、そうだけど、颯磨くんが一瞬、私の足に触れたことに対して、恥ずかしくて仕方がなかった。
「絆創膏、持ってきたから使って。」
颯磨くんが、ポケットから絆創膏を取り出した。
「あ、ありがとう……。」
私は遠慮なく、その絆創膏を使うことにした。
「実は……、予め、こうなることを予想してた。」
えっ…………!?
「なんで……、分かったの……!?」
「……男の勘?」
勘だけで、そこまで分かるものなのかな……?
「取り敢えず、これ履いて。」
私の前に、可愛らしい靴が置かれた。ヒール……
じゃない、スニーカー。
「これ……、どうしたの!?」
「プレゼント。」
「えっ!?いつ買ったの?」
「さっき。」
さ、さっき!?ずっと一緒にいたのに、全然気が付かなかった……。
「悪いよ、こんなの。」
「いいって。この靴、僕が持って帰るわけにもいかないし。」
まあ、そうだけど……、でも……。
「せめてお金、返すよ!」
「それもいいって。僕が勝手にしたことだし。」
でも……、そんな……。
「ごめんね……、迷惑かけて。」
「そんなことない。楽しかった。」
嘘……だよね……。無理してくれてるんだよね。
「おあびに、私、残りの買い物、してくるよ。」
「大丈夫だよ。もう全部買い終わったから。」
えっ……?
「それより、早く履いて。」
「あ、うん。」
私はプレゼントされた靴を履く。
「可愛い……!しかも、ぴったり……!」
「良かった。」
でも、何で足のサイズが分かったの?
私、身長は低いけど、足のサイズは、みんなと同じくらいで、普通だったら、身長からして、小さい靴を選ぶはずなのに……。
「どうして靴のサイズが分かったの……?」
「靴のサイズくらい、見てれば分かるよ。」
見てれば分かる……!?
やっぱり、頭が良い……。天才だ。
「ありがとう……。本当に嬉しい……。」
「僕も喜んでもらえて、嬉しい。」
本当はヒールなんて最初から履きたくなかった。
今まで履いたこと、なかったし、オシャレとか、特に気にする性格じゃなかったから。
でも、スニーカーを履いたら、一気に背が縮んでしまうから……。
親子だと思われちゃうかもしれないのに……。
それでも、一緒に歩いていいの……?
もしも良いなら、私は……、
凄く救われたよ。