キミがくれたコトバ。
13



私達は、さっきからずっと無言だ。

今更、話すことなんてない。

気まづい。

健吾が私の身長のことを迷惑に思っていて、それを知ってしまった私が、別れを告げた。

私達の物語は、もう終わったんだよ。

わざわざ掘り返す必要なんてない。

エピローグさえも、もう終わったんだ。

それに実際、今も一緒に歩きたくないって思ってるんでしょ?

「なんか……、久しぶり。こうやって歩くの。」

気まづい沈黙を破るように、健吾が言った。

「健吾が一緒に歩きたくないって言ったから、もう二度と無いと思ったよ。」

ついつい棘のある言葉を発してしまう。

「そんなこと……!」

「確かに、そこまでは言ってないかもしれないけど、あと5センチは欲しいとは言ったよね。あと、近づくな、とも。」

別れたからこそ、言えることだろうか……?

それとも、幼馴染みだからこそ言えることだろうか……?

だから私は……、やっぱりお姫様なんかじゃない。

本当のお姫様だったなら、きっともう、健吾を許しているし、こんな口もきかない。

「本当にごめん!!」

いきなり健吾が、その場で土下座した。

「え、ちょっ!みんな見てるって……!」

健吾は、お構い無しに、土下座をし続ける。

「健吾!顔上げて!」

私がそう言うと、健吾はやっと顔を上げて、立ち上がった。

「俺、この前、あいつに言われて、本当に反省したんだ!」

あいつ……。颯磨くんのことか。

「ちゃんと謝らなきゃって。許してもらえなくてもいい。本当にごめん!」

颯磨くんには反発していたけど、ちゃんと颯磨くんの言う事も聞いていたんだ。

「ゆ、許したいけど……、記事のことは、さすがに許せないよ……。」

「記事?何のこと?」

「ここにきて、とぼけるつもり?私達の別れた原因が、身長っていう記事のこと!」

本当に反省してるなら、そんなことしないよ……。

「それ……、俺じゃない。」

えっ……?

「嘘!私達の別れた原因、他に誰が知ってるっていうの!?」

「そんなの、俺だって分かんねえ。けど、本当に俺じゃない。」

健吾の目は真剣で、嘘をついているようには見えなかった。

「俺もあの記事は酷いと思ったよ。許せない。」

健吾じゃないなら……、じゃあ、誰?

「でも、俺のしたことだって、十分酷いよな。本当ごめん……。」

こんな真剣な健吾、初めて見た。

いつもおちゃらけてて、真面目な顔なんて、みたことなかった。

だからこそ、もう、許してあげないのは、心が狭いんじゃないかなと思った。

そう。

お姫様になることはできないけど、

「分かった。許すよ。」

お姫様の仮面を被ることはできる……。

「えっ……、本当か……?」

「うん。今回は、ね。」

「あ……、ありがとう……!じ、じゃあ、俺達……!」

「でも、もう付き合うのは、無理だよ。」

ほら、やっぱり、本当のお姫様になんか、なれない。

「まさか、あの颯磨って奴と……?」

「ううん。颯磨くんはただの友達。私、しばらくは誰とも付き合いたくないの。もう、誰にも迷惑かけないって決めたんだ。だから、付き合えない。 」

もう、傷付きたくないから……。

それ以上に、私には、みんなが求めているものを持っていない。

「そっか。良いよ。許して貰えただけでも。本当に申し訳なさでいっぱいなんだ。」

話してみて、少しからず、ちゃんと話して良かったと思えた。

もしも健吾の言葉が全て嘘だったとしても、それでも良いと思えた。

颯磨くんの存在が、私の背中を押してくれた。

これで私はまた、先に進むことができるのかな……?
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