キミがくれたコトバ｡

14.5



僕は走る｡

新聞部の部室まで走り続ける｡

『あのポスター』を再発行って､どういうことだよ！

日奈子が自分の身長について､どんなに悩んでるのか､分かっていなさすぎだ｡

身長が原因で別れたのは､僕と日奈子と健吾しか知らないことだけど､健吾がやったとは思えない｡

悔しいけど､健吾は反省していた｡

だとしたら……､

やっぱり “あいつ” か……？

健吾に吹き込んだのも､全部……！

バンッ！！

僕は新聞部のドアを勢いよく開けた｡

皆が一斉に､僕を見る｡

大丈夫｡落ち着け……｡

｢再発行って､どういうことですか？｣

あくまで冷静に｡感情的になっては駄目だ｡

｢ああ､このポスターのことですか？｣

新聞部部員は､きょとんとしている｡

｢これがどういうことか､本当に分かっているんですか？｣

｢いや〜､実に面白いニュースだと思ってね！｣

新聞部部長が､眼鏡の位置を直しながら､そう
言った｡

感情的になるな､自分｡

｢今すぐ全て破棄してください｡｣

｢それは､できません｡｣

引き下がる様子は無いようだった｡

｢別に､破棄するかどうかは自由ですが､本当に良いんですか？新聞部副部長､中島さん｡｣

僕はこの戦いに勝利する絶対的な自信があった｡

｢2ヶ月前､付き合っていた彼氏を裏切って､二股っ……､｣

中島さんの顔が､どんどん青ざめていく｡

｢それ以上､言わないで！！｣

やっぱり､そう来た｡

｢え？中島さんって二股してたの？｣

部室の奥の方から､安藤という､部員が口を開いた｡

性格上､彼女がこう言うことも､想定していた｡

｢そういう安藤さんも､この前､資料室で……､｣

｢ス……！ストップ！！｣

僕が2人の秘密を話したことで､立場が変わり､部員達がおどおどした雰囲気になった｡

｢何､あの人……！｣

｢エスパーなの……！？｣

実際にエスパーではない｡瞳先生が他の先生や生徒と話しているのを､たまたま聞いたんだ｡

瞳先生は､保健室の先生であるから､色々な情報が回ってくるらしい｡

｢部長､再発行は､しないでもらえますか？｣

部長は答えない｡

これでも､まだ引き下がらないのか｡

｢別に､再発行するかしないかは､部長の自由ですが……､言っても良いんですよ､部長のしてきたことを､全て｡｣

部長の秘密は､何一つ知らない｡

ただ､2人の部員の秘密を言い当てたことで､部長も警戒していたのだろう｡

｢皆！今すぐに記事を全て破棄するように！｣

部長が言った｡

｢はい､分かりました！｣

｢お分かりいただいて､光栄です｡部･長･さん｡｣

｢は､はひぃ！｣

部長の声が裏返る｡

一体､部長にどんな秘密があるのか､逆に気になる｡

しかし僕は､そのまま新聞部の部室を後にした｡

ドアを閉めて､溜息をつく｡

はぁ……｡何とか……｡

全然､冷静なんかじゃない……｡

頭がクラクラする｡

目の前が歪んでいる｡

人と関わるのが怖い｡

でも､これで日奈子の笑顔が守れるなら､それで良いんだ｡