キミがくれたコトバ。
15
颯磨くんが保健室を出ていってから、20分が経過した。
京くんは、颯磨くんに何か耳打ちした後、帰った為、保健室には私1人になった。
颯磨くんのシャープペン……、颯磨くんの、消しゴム……。
無意識に手に取った。
私……、やっぱり颯磨くんのことが……、好きなのかもしれない……。
そんな考えが頭を過ぎって、慌てて颯磨くんのシャープペンと消しゴムを元の位置に戻す。
私……、何やってるんだろう……!
その時、颯磨くんが保健室に戻ってきた。
「颯磨くん……!!」
酷く疲れている様だった。
「日奈子……。」
颯磨くんが近づいてきて……、
ドサッ
私の肩に崩れ落ちた。
「そ、颯磨くん……!?」
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
なんか……、熱い……!!
「大丈夫……!?」
私は颯磨くんをベッドまで連れていって、寝かせた。
「私、何か持ってくるね!」
私がベッドから離れようとすると、颯磨くんが私の腕を掴んだ。
「今は、外に出るな……。」
えっ?どういう意味……?
「でも……。」
「いいから……!今は……、ここにいて……。」
っ…………!!!
掴まれた部分が熱い。
「颯磨くん……、大丈夫……?」
颯磨くんは私の腕を離さない。
「本当は怖い……。」
えっ?
「人と関わるのが……、凄く怖い……。」
あの颯磨くんが……?
人と話すのが怖い……?
「僕は誰にも好かれない。僕に関わった人は、みんな僕を嫌いになる……。だからずっと…、独りだ……。」
颯磨くん……!?
何言って……!
「颯磨くんは独りなんかじゃないよ……!」
言い終わる前に、掴まれていた腕が離れた。
見ると、颯磨くんは目を閉じて、眠っていた。
綺麗な寝顔……。
ずっと見ていたい。
吸い込まれそうで……。
優しそうで……。
みんな颯磨くんを嫌いになるなんて……、
そんなわけないじゃん……。
確かに、いじめがあって、そういう思考になってしまっても仕方がないけれど、京くんだって、大輔くんだって、颯磨くんをちゃんと想ってるよ。
見てれば分かるもん。
それに私だって……、私だって……、
颯磨くんのことが……、
好きだよ……。
本当は早く認めたかったんだ。
私は颯磨くんのことが好き。
でも、今までの好きとは違う。
明人くんは、王子様みたいだから好きだった。
健吾は、弱った私に優しい言葉をかけてくれたから好きだった。
でも……、颯磨くんは違う。
そんな単純な話じゃないの……。
一言じゃ、とても言えない。
言えないよ……。
いつだって颯磨くんがいるから、安心できた。
酷い記事を見て、落ち込んだけど、颯磨くんがいるから大丈夫だって思えたんだ。
健吾を許したことだって、颯磨くんがいたから、健吾に傷つけられたことは、過去のことだって思えることができたんだよ。
全部全部、颯磨くんのおかげ……。
だからこそ、気づきたくなかった。
この想いを、『恋』なんていう簡単な言葉で括りたくなかったんだ。
颯磨くんには幸せになって欲しい。
これ以上、頼っちゃ駄目だ……。
「日奈子ちゃん……!」
颯磨くっ……ではなく、京くんが、保健室に戻ってきた。
「京くん!」
「心配で戻ってきたんだ。颯磨くん、大丈夫…?」
ほら、京くんはちゃんと、颯磨くんのことを想ってるよ。
「それが、帰ってきた後、直ぐに倒れて……。」
「……やっぱり。」
やっぱり?
「あの、颯磨くん、倒れる前に、人と関わるのが怖いって言ってたんだけど、それって……。」
「うん。関わるっていうか、普通に話すのなら大丈夫だと思うんだけど……、ほら、颯磨くんって、正義感が強いでしょ?」
確かに、凄く強い。
私のことも、何回も助けてくれた。
「だから、人からの反感を買いやすいんだよ。」
そうか……。
『赤信号、みんなで渡れば怖くない。』
そんな言葉があるけれど、颯磨くんはその時、
『赤だから、渡っちゃ駄目だ。』
って、みんなに言える子。
そういう子なんだ。
「じゃあ、何で今は倒れたんだろう……?普通に話すのなら大丈夫なんでしょ?なのに倒れたってことは、何か良くないことがあったのかな……?」
そういえば颯磨くん、出ていく時に、
『は……!?何だよ、それ……!』
って言ってた。
やっぱり、ただ事じゃない……?
「その事なんだけどね、」
そう言ってから、京くんは少し躊躇った。
「言ってもいいのかな……?」
「できれば教えて欲しい!」
「でも……、日奈子ちゃんが傷つくよ……。」
え……?私が関連しているの……?
「颯磨くんも、それは望んで無いと思う。」
眠っている颯磨くんの顔を見つめる。
「でも、だからこそ、教えて欲しい!」
私は傷ついても良いから。
「颯磨くんはこんなに弱ってるのに、私だけ何も知らずに元気でいるなんて……、そんなの駄目だよ……。」
颯磨くんに頼ってばかりでは、駄目だから。
「うーん……、じゃあ、颯磨くんには絶対に言っちゃ駄目だよ?」
「分かった。約束する。」
私が頷くと、京くんも頷いて、一呼吸置いてから言った。
「この前の新聞部の記事、あるでしょ?」
ああ、私と健吾の別れた理由が身長だって公に広められた記事……。
「それのね、再発行が決まったんだって。」
えっ……?再発行……?
目の前が真っ黒になった。
「僕が情報を手に入れて、さっき、日奈子ちゃんと 颯磨くんが勉強している時に、颯磨くんに伝えたんだ。」
『颯磨くん、た、大変……!』
あの時だ。
「そしたら、知っての通り、颯磨くんが飛び出していって……、どんな魔法を使ったのか分からないけど、再発行をやめさせたんだ。」
再発行を……!?やめさせた……!?
新聞部の人には、私も前にインタビューされたことがある。
すごくしつこかったのに、一体、どうやって、再発行をやめさせたのだろう。
というか……、私の為に、そんなことまで……。
「それにね、最初にその記事が発行された時、颯磨くんは、学校中の張り紙を、日奈子ちゃんが来る前に、全部剥がしたんだよ。」
っ………………。
「まあ結局、大輔くんが持ってきちゃって、努力は水の泡になっちゃったけどね。」
そんな……。そうだったの……?
「でも、大輔くんのこと、責めないであげてね。悪気は無いと思うから。」
私はゆっくりと頷いた。
分かってるよ。
大輔くんだって、凄く良い人だもん……。
もう一度、颯磨くんの寝顔を見る。
「そんなに……、抱え込んでくれていたなんて。何で、私なんかにそこまでしてくれるの…?」
「それは多分、正義感が強いのと、日奈子ちゃんが大切だからだよ。」
私が……?大切……?
そんなわけ。
「健吾くんとのことも、かなり心配してるみたい。」
そ、そうだったの……?
私、何も知らなかった……。
そんなに心配してくれる人がいただなんて……。
泣きそうになる。
でも、ぐっと堪える。
そんな……、倒れるまで私のことなんて助けないでよ……。
もう……後戻りできなくなるから。
颯磨くんが保健室を出ていってから、20分が経過した。
京くんは、颯磨くんに何か耳打ちした後、帰った為、保健室には私1人になった。
颯磨くんのシャープペン……、颯磨くんの、消しゴム……。
無意識に手に取った。
私……、やっぱり颯磨くんのことが……、好きなのかもしれない……。
そんな考えが頭を過ぎって、慌てて颯磨くんのシャープペンと消しゴムを元の位置に戻す。
私……、何やってるんだろう……!
その時、颯磨くんが保健室に戻ってきた。
「颯磨くん……!!」
酷く疲れている様だった。
「日奈子……。」
颯磨くんが近づいてきて……、
ドサッ
私の肩に崩れ落ちた。
「そ、颯磨くん……!?」
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
なんか……、熱い……!!
「大丈夫……!?」
私は颯磨くんをベッドまで連れていって、寝かせた。
「私、何か持ってくるね!」
私がベッドから離れようとすると、颯磨くんが私の腕を掴んだ。
「今は、外に出るな……。」
えっ?どういう意味……?
「でも……。」
「いいから……!今は……、ここにいて……。」
っ…………!!!
掴まれた部分が熱い。
「颯磨くん……、大丈夫……?」
颯磨くんは私の腕を離さない。
「本当は怖い……。」
えっ?
「人と関わるのが……、凄く怖い……。」
あの颯磨くんが……?
人と話すのが怖い……?
「僕は誰にも好かれない。僕に関わった人は、みんな僕を嫌いになる……。だからずっと…、独りだ……。」
颯磨くん……!?
何言って……!
「颯磨くんは独りなんかじゃないよ……!」
言い終わる前に、掴まれていた腕が離れた。
見ると、颯磨くんは目を閉じて、眠っていた。
綺麗な寝顔……。
ずっと見ていたい。
吸い込まれそうで……。
優しそうで……。
みんな颯磨くんを嫌いになるなんて……、
そんなわけないじゃん……。
確かに、いじめがあって、そういう思考になってしまっても仕方がないけれど、京くんだって、大輔くんだって、颯磨くんをちゃんと想ってるよ。
見てれば分かるもん。
それに私だって……、私だって……、
颯磨くんのことが……、
好きだよ……。
本当は早く認めたかったんだ。
私は颯磨くんのことが好き。
でも、今までの好きとは違う。
明人くんは、王子様みたいだから好きだった。
健吾は、弱った私に優しい言葉をかけてくれたから好きだった。
でも……、颯磨くんは違う。
そんな単純な話じゃないの……。
一言じゃ、とても言えない。
言えないよ……。
いつだって颯磨くんがいるから、安心できた。
酷い記事を見て、落ち込んだけど、颯磨くんがいるから大丈夫だって思えたんだ。
健吾を許したことだって、颯磨くんがいたから、健吾に傷つけられたことは、過去のことだって思えることができたんだよ。
全部全部、颯磨くんのおかげ……。
だからこそ、気づきたくなかった。
この想いを、『恋』なんていう簡単な言葉で括りたくなかったんだ。
颯磨くんには幸せになって欲しい。
これ以上、頼っちゃ駄目だ……。
「日奈子ちゃん……!」
颯磨くっ……ではなく、京くんが、保健室に戻ってきた。
「京くん!」
「心配で戻ってきたんだ。颯磨くん、大丈夫…?」
ほら、京くんはちゃんと、颯磨くんのことを想ってるよ。
「それが、帰ってきた後、直ぐに倒れて……。」
「……やっぱり。」
やっぱり?
「あの、颯磨くん、倒れる前に、人と関わるのが怖いって言ってたんだけど、それって……。」
「うん。関わるっていうか、普通に話すのなら大丈夫だと思うんだけど……、ほら、颯磨くんって、正義感が強いでしょ?」
確かに、凄く強い。
私のことも、何回も助けてくれた。
「だから、人からの反感を買いやすいんだよ。」
そうか……。
『赤信号、みんなで渡れば怖くない。』
そんな言葉があるけれど、颯磨くんはその時、
『赤だから、渡っちゃ駄目だ。』
って、みんなに言える子。
そういう子なんだ。
「じゃあ、何で今は倒れたんだろう……?普通に話すのなら大丈夫なんでしょ?なのに倒れたってことは、何か良くないことがあったのかな……?」
そういえば颯磨くん、出ていく時に、
『は……!?何だよ、それ……!』
って言ってた。
やっぱり、ただ事じゃない……?
「その事なんだけどね、」
そう言ってから、京くんは少し躊躇った。
「言ってもいいのかな……?」
「できれば教えて欲しい!」
「でも……、日奈子ちゃんが傷つくよ……。」
え……?私が関連しているの……?
「颯磨くんも、それは望んで無いと思う。」
眠っている颯磨くんの顔を見つめる。
「でも、だからこそ、教えて欲しい!」
私は傷ついても良いから。
「颯磨くんはこんなに弱ってるのに、私だけ何も知らずに元気でいるなんて……、そんなの駄目だよ……。」
颯磨くんに頼ってばかりでは、駄目だから。
「うーん……、じゃあ、颯磨くんには絶対に言っちゃ駄目だよ?」
「分かった。約束する。」
私が頷くと、京くんも頷いて、一呼吸置いてから言った。
「この前の新聞部の記事、あるでしょ?」
ああ、私と健吾の別れた理由が身長だって公に広められた記事……。
「それのね、再発行が決まったんだって。」
えっ……?再発行……?
目の前が真っ黒になった。
「僕が情報を手に入れて、さっき、日奈子ちゃんと 颯磨くんが勉強している時に、颯磨くんに伝えたんだ。」
『颯磨くん、た、大変……!』
あの時だ。
「そしたら、知っての通り、颯磨くんが飛び出していって……、どんな魔法を使ったのか分からないけど、再発行をやめさせたんだ。」
再発行を……!?やめさせた……!?
新聞部の人には、私も前にインタビューされたことがある。
すごくしつこかったのに、一体、どうやって、再発行をやめさせたのだろう。
というか……、私の為に、そんなことまで……。
「それにね、最初にその記事が発行された時、颯磨くんは、学校中の張り紙を、日奈子ちゃんが来る前に、全部剥がしたんだよ。」
っ………………。
「まあ結局、大輔くんが持ってきちゃって、努力は水の泡になっちゃったけどね。」
そんな……。そうだったの……?
「でも、大輔くんのこと、責めないであげてね。悪気は無いと思うから。」
私はゆっくりと頷いた。
分かってるよ。
大輔くんだって、凄く良い人だもん……。
もう一度、颯磨くんの寝顔を見る。
「そんなに……、抱え込んでくれていたなんて。何で、私なんかにそこまでしてくれるの…?」
「それは多分、正義感が強いのと、日奈子ちゃんが大切だからだよ。」
私が……?大切……?
そんなわけ。
「健吾くんとのことも、かなり心配してるみたい。」
そ、そうだったの……?
私、何も知らなかった……。
そんなに心配してくれる人がいただなんて……。
泣きそうになる。
でも、ぐっと堪える。
そんな……、倒れるまで私のことなんて助けないでよ……。
もう……後戻りできなくなるから。