キミがくれたコトバ。
17
月曜日。
私が登校するのは、1時間目が始まった少し後。
なので早起きしつつも、ゆっくり準備をしている。
ピーンポーン
インターフォンが鳴った。
えっ?こんな時間に誰?
「はーい!」
お母さんが玄関に出る。
「あら〜!久しぶりね〜!大きくなって〜!え?日奈子?まだ家にいるわよ。」
え……何?私……?
待って、嫌な予感がする……。
「日奈子〜?ちょっといらっしゃ〜い!」
私は渋々重たい足を上げて、玄関に出た。
「日奈子……。」
健吾……。
えっと……、何で来たの……?
「健吾くんがね〜、迎えに来てくれたって!良かったわね〜!」
久々に普通に学校へ行くのが、嬉しいのか、お母さんはやたらとテンションが高い。
「じゃあ、お母さんはこのまま会社へ行くから。2人とも、いってらっしゃい!」
そう言って、お母さんは家から出ていった。
「……何で来たの。」
「俺のせいで保健室登校になったんだから、責任もって、俺がまた教室へ戻れるようにしないといけないと思ったんだ。」
はっきり言って、余計なお世話。
「嫌だ。私はいつもの時間に行くから。」
なんて我儘なんだろう、私。
学校へ普通の時間に行くのは当たり前だ。
それを、嫌だなんて……。
こんな自分が自分で嫌だ。
「でも……、行ったら日奈子が想像しているよりも楽しいと思う。」
そんなわけないでしょ!
楽しかったら、保健室登校になんてなってない。
「俺が保証する。」
「それでも私は行きたくないよ。」
「だったら、日奈子が行きたくなるまで俺がここで待ってるし、毎日来るから。」
そんな……、困るよ……。
「そしたら、健吾が遅刻扱いになるでしょ。」
「別に俺はいい。日奈子をここまで追い込んだのは俺だから。当然のことだよ。」
本当に困るってもう……。
でも……。
健吾が言っていることは、今は何一つ間違っていない。
だから、これは私の我儘。
今ここで健吾を遅刻させたら、いくら健吾が私を保健室登校にさせたといっても、それは私のせいで……。
「分かったよ……。行くよ……。」
本当は行きたくない……。
でも、仕方が無いんだ。
私は、お姫様の仮面を被る。
若干、足の震えが止まらないまま、私は久しぶりに普通の時間に登校した。
仮面を被ったお姫様と、王子様(仮)。
家から学校までは近く、20分足らずで到着してしまった。
その間、健吾とはほぼ無言だった。
やっぱり、幼馴染みの時のように戻るなんて、無理だよ……。
門をくぐると、一斉に大勢の人に囲まれた。
な、何……?
健吾が私の手を握る。
私は、その手を素早く離す。
「スクープです!特進科カップル、まさかの〜!和解!?」
……っ……やめて……!
ほら、結局、こうなるんじゃない……。
「お2人は、身長が原因で別れたのでは!?今のお気持ちをお聞かせ下さい!」
やめてよ……。やめて……。
もう、身長の話はやめて……。
泣くのだけは駄目だ。
駄目。ここで泣いたら、これも記事にされる…。
だから言ったのに。
健吾、責任とってよ……。
保証するって言ったよね……。
「ちょっと!」
健吾が新聞部に叫んだ。
……いや、健吾じゃない……?
声が……、落ち着く声だ。
「いい加減、くだらないこと、やめたらどうですか?」
「颯磨くんっ……!」
なんで……?来てくれたの?
「久しぶりですね、部長。それから、中島さんと安藤さんも。」
新聞部の顔色が変わる。
そして、急に慌て始めた。
「あ、しゅ、取材は中止だ、中止!!」
え……?
「そ、そうね。もう、こんなくだらないことはやめましょう。」
「そうよ、そうよ。もっと大事なことがいっぱいあると思うし……ね?」
新聞部部員一同は、そういうと、走って逃げていった。
唖然。呆然。
何が起きたのか分からない。
「日奈子、大丈夫か?」
颯磨くんからそう言われた時、周りから色々な
声が聞こえてきた。
「ねぇ、あれって水瀬颯磨じゃない?」
「えー、あいつ不登校じゃん。学校来てるわけないでしょ。」
「確かに。じゃあ何あれ。幻覚?」
「水瀬颯磨の幻覚とか。キモいんですけどー。」
…………っ酷い。
颯磨くん……。
「隣にいる女の子は誰?」
「えっと、あの子は……。」
その瞬間、颯磨くんは私の手を引いて、上手く顔を隠してくれた。
「顔隠れててあんまり見えないなー。」
「あーあ。残念。行こ?」
「うん。」
辺りがしんと静まり返る。
「日奈子!大丈夫か!?」
健吾が言う。
「大丈夫なわけないじゃないですか。最初から足震えてるの、気づかなかったんですか?日奈子、行こう。」
颯磨くんは私の手を引くと、そのまま保健室まで行った。
保健室の扉を開けると、中には誰もいなかった。
「瞳先生は出張、京は病院。大輔は寝坊。」
颯磨くんが説明してくれたけど、私の頭には入ってこなかった。
色々な感情がぐちゃぐちゃになって、我慢していた涙が溢れ出た。
「颯磨くん……。」
「大丈夫だ。怖かったな。」
優しく頭を撫でられる。
「ごめん……、ごめんね……。私のせいで……。」
私のせいで颯磨くんが、あんなに悪口を言われた。
悲しいのは颯磨くんの方なのに……。
「僕は何も気にしてないよ。慣れてるから。」
そんな……、悪口に慣れる人なんて、いるわけないのに……。
「日奈子は何も悪くないだろ。ただ色々な偶然が運悪く重なっただけ。」
颯磨くん……。
どうしてそんなに優しいの……?
どうして味方になってくれるの……?
分からないけど、でもそれが嘘じゃないって分かっているから、だから安心できるんだ。
月曜日。
私が登校するのは、1時間目が始まった少し後。
なので早起きしつつも、ゆっくり準備をしている。
ピーンポーン
インターフォンが鳴った。
えっ?こんな時間に誰?
「はーい!」
お母さんが玄関に出る。
「あら〜!久しぶりね〜!大きくなって〜!え?日奈子?まだ家にいるわよ。」
え……何?私……?
待って、嫌な予感がする……。
「日奈子〜?ちょっといらっしゃ〜い!」
私は渋々重たい足を上げて、玄関に出た。
「日奈子……。」
健吾……。
えっと……、何で来たの……?
「健吾くんがね〜、迎えに来てくれたって!良かったわね〜!」
久々に普通に学校へ行くのが、嬉しいのか、お母さんはやたらとテンションが高い。
「じゃあ、お母さんはこのまま会社へ行くから。2人とも、いってらっしゃい!」
そう言って、お母さんは家から出ていった。
「……何で来たの。」
「俺のせいで保健室登校になったんだから、責任もって、俺がまた教室へ戻れるようにしないといけないと思ったんだ。」
はっきり言って、余計なお世話。
「嫌だ。私はいつもの時間に行くから。」
なんて我儘なんだろう、私。
学校へ普通の時間に行くのは当たり前だ。
それを、嫌だなんて……。
こんな自分が自分で嫌だ。
「でも……、行ったら日奈子が想像しているよりも楽しいと思う。」
そんなわけないでしょ!
楽しかったら、保健室登校になんてなってない。
「俺が保証する。」
「それでも私は行きたくないよ。」
「だったら、日奈子が行きたくなるまで俺がここで待ってるし、毎日来るから。」
そんな……、困るよ……。
「そしたら、健吾が遅刻扱いになるでしょ。」
「別に俺はいい。日奈子をここまで追い込んだのは俺だから。当然のことだよ。」
本当に困るってもう……。
でも……。
健吾が言っていることは、今は何一つ間違っていない。
だから、これは私の我儘。
今ここで健吾を遅刻させたら、いくら健吾が私を保健室登校にさせたといっても、それは私のせいで……。
「分かったよ……。行くよ……。」
本当は行きたくない……。
でも、仕方が無いんだ。
私は、お姫様の仮面を被る。
若干、足の震えが止まらないまま、私は久しぶりに普通の時間に登校した。
仮面を被ったお姫様と、王子様(仮)。
家から学校までは近く、20分足らずで到着してしまった。
その間、健吾とはほぼ無言だった。
やっぱり、幼馴染みの時のように戻るなんて、無理だよ……。
門をくぐると、一斉に大勢の人に囲まれた。
な、何……?
健吾が私の手を握る。
私は、その手を素早く離す。
「スクープです!特進科カップル、まさかの〜!和解!?」
……っ……やめて……!
ほら、結局、こうなるんじゃない……。
「お2人は、身長が原因で別れたのでは!?今のお気持ちをお聞かせ下さい!」
やめてよ……。やめて……。
もう、身長の話はやめて……。
泣くのだけは駄目だ。
駄目。ここで泣いたら、これも記事にされる…。
だから言ったのに。
健吾、責任とってよ……。
保証するって言ったよね……。
「ちょっと!」
健吾が新聞部に叫んだ。
……いや、健吾じゃない……?
声が……、落ち着く声だ。
「いい加減、くだらないこと、やめたらどうですか?」
「颯磨くんっ……!」
なんで……?来てくれたの?
「久しぶりですね、部長。それから、中島さんと安藤さんも。」
新聞部の顔色が変わる。
そして、急に慌て始めた。
「あ、しゅ、取材は中止だ、中止!!」
え……?
「そ、そうね。もう、こんなくだらないことはやめましょう。」
「そうよ、そうよ。もっと大事なことがいっぱいあると思うし……ね?」
新聞部部員一同は、そういうと、走って逃げていった。
唖然。呆然。
何が起きたのか分からない。
「日奈子、大丈夫か?」
颯磨くんからそう言われた時、周りから色々な
声が聞こえてきた。
「ねぇ、あれって水瀬颯磨じゃない?」
「えー、あいつ不登校じゃん。学校来てるわけないでしょ。」
「確かに。じゃあ何あれ。幻覚?」
「水瀬颯磨の幻覚とか。キモいんですけどー。」
…………っ酷い。
颯磨くん……。
「隣にいる女の子は誰?」
「えっと、あの子は……。」
その瞬間、颯磨くんは私の手を引いて、上手く顔を隠してくれた。
「顔隠れててあんまり見えないなー。」
「あーあ。残念。行こ?」
「うん。」
辺りがしんと静まり返る。
「日奈子!大丈夫か!?」
健吾が言う。
「大丈夫なわけないじゃないですか。最初から足震えてるの、気づかなかったんですか?日奈子、行こう。」
颯磨くんは私の手を引くと、そのまま保健室まで行った。
保健室の扉を開けると、中には誰もいなかった。
「瞳先生は出張、京は病院。大輔は寝坊。」
颯磨くんが説明してくれたけど、私の頭には入ってこなかった。
色々な感情がぐちゃぐちゃになって、我慢していた涙が溢れ出た。
「颯磨くん……。」
「大丈夫だ。怖かったな。」
優しく頭を撫でられる。
「ごめん……、ごめんね……。私のせいで……。」
私のせいで颯磨くんが、あんなに悪口を言われた。
悲しいのは颯磨くんの方なのに……。
「僕は何も気にしてないよ。慣れてるから。」
そんな……、悪口に慣れる人なんて、いるわけないのに……。
「日奈子は何も悪くないだろ。ただ色々な偶然が運悪く重なっただけ。」
颯磨くん……。
どうしてそんなに優しいの……?
どうして味方になってくれるの……?
分からないけど、でもそれが嘘じゃないって分かっているから、だから安心できるんだ。