キミがくれたコトバ。
21
次の日。
何だかまた早く目が覚めてしまって、早めに登校した。
保健室のドアを開けると、まだ誰もいなかった。
もし、これが2週間前だったら、颯磨くんがいたのに……。
まさか急に戻っちゃうとは思わなかったんだもん。
こんなことなら、毎日早めに来ていれば良かった。
そしたら私は颯磨くんと……
って!
考えない、考えない!
もう過去のことだし、颯磨くんは私のものじゃないし、ただの友達だから。
あー、もう!
寝よっかな……。
私はベッドへ向かった。
右のベッドには、いつも京くんが寝ているから、左のベッドへ。
シャッ!
カーテンを開けて、私はついに頭がおかしくなったのかと思った。
「えっ!?」
「しーっ!」
え、ちょっ、これ夢……!?
「そ、そそそ、颯磨くん!?」
私は少しだけ声のトーンを落とす。
な、なんで颯磨くんがベッドに寝てるの……!?
「ここじゃないと、女子が煩くて、勉強に集中できないんだ。」
は、はあ。
なんか、颯磨くん、変わった……?
いや、そりゃ変わるよね。
一夜にして、あんなに人気者になったんだから。
「日奈子、今日は早いな。」
ドクンッ
久しぶりに颯磨くんと話せて、喜んでいる自分がいる。
もっと話したい。
言いたいこと、沢山ある。
でも……。
「うん、早く目が覚めちゃって。勉強頑張って。」
そう言うと、私はベッドから離れた。
駄目だよ。
もう、嫌いにならなきゃ駄目。
それじゃないと、また颯磨くんを傷つけるかもしれない……。
私は仕方なく、保健室に置いてあるテーブルの椅子に座る。
しばらくすると、案の定(?)女子の軍団がやって来た。
「おはようございま〜す!」
「あれ〜?王子は〜?」
「まだ来てないとか?」
「有り得ないよ〜、絶対!教室にいないってことは、保健室にいるはず!!」
その時、やっと女子達が、私の存在に気づいたらしい。
「あんた、この前の。」
うわー、明らかに敵対視されてる……。
「王子知らない?」
「この子が知ってるわけないでしょ。」
「ってか知ってても教えないに決まってるよ。」
「確かに〜、明らかに王子のこと好きだもんね。」
「独り占めしようとしてるんだよ〜。ずるい!」
私は、気づかれないように、小さく溜息をついた。
そして、その瞬間、勢いよく立ち上がってから言った。
「王子なら、左のベッドで寝てますよ。」
なるべくにこやかに。
愛想よく。
『颯磨くん』ではなくて、『王子』と言ったのは、わざと。
私だって、他の女子と同じ位置に立てば、忘れられると思ったんだ。
ちょっとした、願掛けみたいなもの。
「本当〜?」
疑っている様子で、一人の子が保健室のカーテンを開けた。
「キャー!王子ー!!」
颯磨くんは、バツの悪そうな顔をしている。
でも知らない、そんなこと。
必死に自分にそう言いかける。
本当は、気になって仕方がない。
教えたくなかったはずなのに……。
「教えてくれて、ありがとう!」
さっきの子が、掌を返したように接してくる。
「どういたしまして。あと、訂正しておきたいことがあるんだけど。」
もう何も言われないように。
颯磨くんが、傷つかないように、
関係を、断つんだ。
「私は王子のこと、なんとも思ってないよ。好きでもなんでもない。ただ、同じ保健室登校だっただけ。それだけだから。」
言った……。
もう終わり。
「日奈子……、」
颯磨くんの方を見れない。
でも、これで良いんだ。
「そ、そうなの!?」
「うん。私ね、他に好きな人がいるんだ。同じ保健室登校の子で。あ、でも大輔くんじゃないから安心して。」
女子の表情が、どんどん明るくなる。
「そ〜なんだ!」
「え、うちらその恋、応援するよ!!」
「今までキツく当たっちゃって本当にごめん ! 」
「私もゴメンね!!」
「うん、私は大丈夫だよ。私こそ誤解させるようなことしちゃってごめんね。」
これで、颯磨くんの取り巻きから好かれれば、というか嫌われなければ、私も颯磨くんも、傷つかなくて済む。
最適解だよ。
「わ〜、めっちゃ良い子じゃん!なんか誤解してた!名前何ていうの?」
「泉沢 日奈子です。」
「日奈子ちゃん!可愛い名前だねー!!」
「いえ、そんな。」
「謙遜なんてしないでよ〜。うちらもう友達なんだからさ!ね?」
「うん。」
笑顔をキープしすぎていて、苦笑いになっていないか心配だ。
「この前はチビとか言っちゃったけどさ、今考えると、嫉妬だったの……。」
「そう!私も!」
「だって日奈子ちゃん、ちっちゃくて可愛いんだも〜ん!!」
良い感じ。
だけど何か……。
ちょっとウザい。
まあ、丸く収まるならなんでもいいけど。
「じゃあ私達、これで行くね。」
「バイバーイ!」
女子達が、保健室から出ていく。
「ほら、王子も早く!」
急かす女子を無視して、颯磨くんが私の方へ来た。
「日奈子……、」
「早く行かないと、また誤解されちゃうよ。」
「僕は、誤解されても別に良いよ!」
「そんなの……、私は嫌だ!」
ついつい強い言い方になってしまって、すぐに後悔する。
どうして、こんな言い方になってしまうの……?
好きなのに……。
でも、嫌なんだ。
私は誤解されてもいい。
でも、颯磨くんが誤解されるのが嫌なんだよ。
「……そっか。」
後悔なんて、する必要無い。
私が颯磨くんのことを嫌いになれないんだったら、颯磨くんが私を嫌いになればいい。
「分かった。ごめん。」
そう言うと、颯磨くんは振り返って、
「京と……上手くいくと良いな。」
そう呟いて、保健室から出ていった。
次の日。
何だかまた早く目が覚めてしまって、早めに登校した。
保健室のドアを開けると、まだ誰もいなかった。
もし、これが2週間前だったら、颯磨くんがいたのに……。
まさか急に戻っちゃうとは思わなかったんだもん。
こんなことなら、毎日早めに来ていれば良かった。
そしたら私は颯磨くんと……
って!
考えない、考えない!
もう過去のことだし、颯磨くんは私のものじゃないし、ただの友達だから。
あー、もう!
寝よっかな……。
私はベッドへ向かった。
右のベッドには、いつも京くんが寝ているから、左のベッドへ。
シャッ!
カーテンを開けて、私はついに頭がおかしくなったのかと思った。
「えっ!?」
「しーっ!」
え、ちょっ、これ夢……!?
「そ、そそそ、颯磨くん!?」
私は少しだけ声のトーンを落とす。
な、なんで颯磨くんがベッドに寝てるの……!?
「ここじゃないと、女子が煩くて、勉強に集中できないんだ。」
は、はあ。
なんか、颯磨くん、変わった……?
いや、そりゃ変わるよね。
一夜にして、あんなに人気者になったんだから。
「日奈子、今日は早いな。」
ドクンッ
久しぶりに颯磨くんと話せて、喜んでいる自分がいる。
もっと話したい。
言いたいこと、沢山ある。
でも……。
「うん、早く目が覚めちゃって。勉強頑張って。」
そう言うと、私はベッドから離れた。
駄目だよ。
もう、嫌いにならなきゃ駄目。
それじゃないと、また颯磨くんを傷つけるかもしれない……。
私は仕方なく、保健室に置いてあるテーブルの椅子に座る。
しばらくすると、案の定(?)女子の軍団がやって来た。
「おはようございま〜す!」
「あれ〜?王子は〜?」
「まだ来てないとか?」
「有り得ないよ〜、絶対!教室にいないってことは、保健室にいるはず!!」
その時、やっと女子達が、私の存在に気づいたらしい。
「あんた、この前の。」
うわー、明らかに敵対視されてる……。
「王子知らない?」
「この子が知ってるわけないでしょ。」
「ってか知ってても教えないに決まってるよ。」
「確かに〜、明らかに王子のこと好きだもんね。」
「独り占めしようとしてるんだよ〜。ずるい!」
私は、気づかれないように、小さく溜息をついた。
そして、その瞬間、勢いよく立ち上がってから言った。
「王子なら、左のベッドで寝てますよ。」
なるべくにこやかに。
愛想よく。
『颯磨くん』ではなくて、『王子』と言ったのは、わざと。
私だって、他の女子と同じ位置に立てば、忘れられると思ったんだ。
ちょっとした、願掛けみたいなもの。
「本当〜?」
疑っている様子で、一人の子が保健室のカーテンを開けた。
「キャー!王子ー!!」
颯磨くんは、バツの悪そうな顔をしている。
でも知らない、そんなこと。
必死に自分にそう言いかける。
本当は、気になって仕方がない。
教えたくなかったはずなのに……。
「教えてくれて、ありがとう!」
さっきの子が、掌を返したように接してくる。
「どういたしまして。あと、訂正しておきたいことがあるんだけど。」
もう何も言われないように。
颯磨くんが、傷つかないように、
関係を、断つんだ。
「私は王子のこと、なんとも思ってないよ。好きでもなんでもない。ただ、同じ保健室登校だっただけ。それだけだから。」
言った……。
もう終わり。
「日奈子……、」
颯磨くんの方を見れない。
でも、これで良いんだ。
「そ、そうなの!?」
「うん。私ね、他に好きな人がいるんだ。同じ保健室登校の子で。あ、でも大輔くんじゃないから安心して。」
女子の表情が、どんどん明るくなる。
「そ〜なんだ!」
「え、うちらその恋、応援するよ!!」
「今までキツく当たっちゃって本当にごめん ! 」
「私もゴメンね!!」
「うん、私は大丈夫だよ。私こそ誤解させるようなことしちゃってごめんね。」
これで、颯磨くんの取り巻きから好かれれば、というか嫌われなければ、私も颯磨くんも、傷つかなくて済む。
最適解だよ。
「わ〜、めっちゃ良い子じゃん!なんか誤解してた!名前何ていうの?」
「泉沢 日奈子です。」
「日奈子ちゃん!可愛い名前だねー!!」
「いえ、そんな。」
「謙遜なんてしないでよ〜。うちらもう友達なんだからさ!ね?」
「うん。」
笑顔をキープしすぎていて、苦笑いになっていないか心配だ。
「この前はチビとか言っちゃったけどさ、今考えると、嫉妬だったの……。」
「そう!私も!」
「だって日奈子ちゃん、ちっちゃくて可愛いんだも〜ん!!」
良い感じ。
だけど何か……。
ちょっとウザい。
まあ、丸く収まるならなんでもいいけど。
「じゃあ私達、これで行くね。」
「バイバーイ!」
女子達が、保健室から出ていく。
「ほら、王子も早く!」
急かす女子を無視して、颯磨くんが私の方へ来た。
「日奈子……、」
「早く行かないと、また誤解されちゃうよ。」
「僕は、誤解されても別に良いよ!」
「そんなの……、私は嫌だ!」
ついつい強い言い方になってしまって、すぐに後悔する。
どうして、こんな言い方になってしまうの……?
好きなのに……。
でも、嫌なんだ。
私は誤解されてもいい。
でも、颯磨くんが誤解されるのが嫌なんだよ。
「……そっか。」
後悔なんて、する必要無い。
私が颯磨くんのことを嫌いになれないんだったら、颯磨くんが私を嫌いになればいい。
「分かった。ごめん。」
そう言うと、颯磨くんは振り返って、
「京と……上手くいくと良いな。」
そう呟いて、保健室から出ていった。