キミがくれたコトバ。
22
放課後、いつもの時間に帰りの仕度をし、靴箱まで行くと……、
「日奈子……!」
なんとそこには、颯磨くんが立っていた。
颯磨くんも、今から帰るところらしい。
私は笑顔で軽く会釈をしてから、颯磨くんをすり抜けて、帰ろうとしたが、すぐにその腕を掴まれた。
「待って。」
触れられた部分から、熱が伝わってしまいそうだ。
颯磨くんの言葉には、いつも威力がある。
その威力に、何度も助けられてきたんだ。
だからこそ、私は『待って。』と言われて、素直に立ち止まってしまう。
「女子はみんな部活に行ってる。だから今しかない。」
颯磨くんの瞳は、いつもと変わらず真剣だった。
「ちゃんと話したい。」
駄目だよ。
そんなに見つめられたら、全然忘れられなくなっちゃうよ……。
「でも……、」
「何で避ける?」
颯磨くんが、不安そうな顔でこちらを見つめる。
こんな顔……、初めて見た……。
私は何も言えなくなって、ただ黙って下を向いていた。
「話したくない……?」
颯磨くんの顔を見ると、何故かいつも嘘がつけなくなってしまう。
私はゆっくりと首を振る。
「歩きながら話そうか。」
そう言って、私達は歩き出す。
何処へ向かっているのかは分からない。
ただ、颯磨くんに合わせて、歩く。
隣にいる。
それだけで、幸福……。
「嫌いになった?だから避けてるのかな……?だとしたら、どうして嫌われたのか……、全部知りたい。」
それを聞いた瞬間、何だかほっとした。
ずっと遠くの存在になってしまったのではないかと思っていたけれど、話し方も、声も、口調も、いつもの颯磨くんのままだった。
「き、嫌いじゃない……。」
目は合わない。
2人ともずっと足下を見て、ただ淡々と歩いているだけ。
「なら良かった。」
「でも、避けてたのは本当。」
ちゃんと全部、言わなくちゃいけないと思った。
ちゃんと言った上で、関わりを断とう。
「どうして?」
「颯磨くんに……、迷惑がかかると思ったから。」
「何それ。」
「せっかく颯磨くんがクラスに戻れたのに、私なんかに構って、私を助けたりしたら、女子達の機嫌が悪くなっちゃって、また颯磨くんがクラスにいられなくなったらって考えたら嫌だったから……。」
一気に全てを吐き出して、なんだか少しすっきりしたような気がする。
「じゃあ、誤解されるのが嫌だって言ったのは……!」
「そうだよ。颯磨くんが誤解されちゃうのが、嫌だったの。」
「なんだ。そっか。」
颯磨くんが、溜息のようなものをついた。
「日奈子は京のことが好きだからさ、僕との関係を誤解されたら都合が悪いって、そういう意味だと思ってた。」
あっ……、そうだ。颯磨くんに、私が京くんのことが好きだって、誤解されてるんだった……。
私はどう誤魔化したら良いのか分からなくて、苦笑いをした。
「嫌われてないなら、良かった。僕、日奈子と京のこと、応援するから!」
え……、ど、どうしよう……。
やっぱり、ちゃんと言わなくちゃ。
私の好きな人は、京くんじゃないって……!
「あ、あの……、」
私が言いかけたその瞬間、
「ここ。」
颯磨くんが足を止めた。
「昔、遊園地だった所。」
私はそこでやっと、上を見上げる。
すると、颯磨くんと、目が合った。
ドクンッ……!
こら!
今、何考えた?
駄目だよ。
その考えだけは駄目だよ。
だって、颯磨くんは私を好きじゃない。
京くんと私を応援してくれるって言ったのは、きっと私のことを何とも思っていないからで……。
「結構、好きな場所なんだ。」
「へえ。」
「あ、クレーンゲーム。」
見ると、近くにクレーンゲームが置かれていた。
元々、遊園地だったららしいけど、今はクレーンゲームと観覧車しかない。
「好きなの?クレーンゲーム。」
「割と。」
颯磨くん、上手そうだな。
「やる?」
「いいの?」
「うん。私は苦手なんだけど、颯磨くんが上手そうだから、見てみたい!」
そう言うと、颯磨くんは、手際よくお金を入れて、プレイし始めた。
「何か欲しいものある?」
デタラメに置かれているぬいぐるみを眺めると、かつて健吾とクレーンゲームをした時にあった、うさぎのぬいぐるみを見つけた。
「あっ……。」
でも、駄目だ。
これ以上、颯磨くんに迷惑かけちゃ駄目だよ。
どうせ明日以降は、ほとんど関わらない。
私が一瞬でも、重荷になってしまっては駄目だ。
「あの……、どれでもいいよ。」
どれでも嬉しい……。
自分にそう言い聞かせる。
「そう。分かった。」
そして、颯磨くんは、ゲームを操作し始めた。
その動きは、凄く滑らかで、ずっと見ていたかった。
颯磨くん……、真剣な瞳……。
ドクンッ
駄目……!!
こんなのただの錯覚……!!
別に、もう好きなんかじゃないっ……。
やがてクレーンは、1匹の動物を捕らえた。
っ……!!!!!
クレーンに引っかかっている動物は……、
うさぎだった。
ど、どうして……。
いや、こんなの偶然に決まってるよ。ね?
そのままぬいぐるみが手元に落ちてきた。
「はい。」
「あ、ありがとう……!」
偶然だとしても、本当に嬉しい……!!
「これ、欲しかったんでしょ?」
えっ…………!?!?
「ど、どうして……、分かったの……?」
「目の動きとかかな?見てれば分かるよ。」
そんな……。
凄い……。
「ありがとう。凄く嬉しい……!」
「喜んでもらえて良かった。」
しばらく、そのうさぎを眺めていた。
「ねえ、少しだけ言いたいことがあるんだ。だから、観覧車、乗らない?」
えっ……!
か、観覧車っ……!?
颯磨くんと2人でっ……!?
も、持つかな……?
気持ち。
ねえ、取り返しのつかないことになんて、ならないよね……?
放課後、いつもの時間に帰りの仕度をし、靴箱まで行くと……、
「日奈子……!」
なんとそこには、颯磨くんが立っていた。
颯磨くんも、今から帰るところらしい。
私は笑顔で軽く会釈をしてから、颯磨くんをすり抜けて、帰ろうとしたが、すぐにその腕を掴まれた。
「待って。」
触れられた部分から、熱が伝わってしまいそうだ。
颯磨くんの言葉には、いつも威力がある。
その威力に、何度も助けられてきたんだ。
だからこそ、私は『待って。』と言われて、素直に立ち止まってしまう。
「女子はみんな部活に行ってる。だから今しかない。」
颯磨くんの瞳は、いつもと変わらず真剣だった。
「ちゃんと話したい。」
駄目だよ。
そんなに見つめられたら、全然忘れられなくなっちゃうよ……。
「でも……、」
「何で避ける?」
颯磨くんが、不安そうな顔でこちらを見つめる。
こんな顔……、初めて見た……。
私は何も言えなくなって、ただ黙って下を向いていた。
「話したくない……?」
颯磨くんの顔を見ると、何故かいつも嘘がつけなくなってしまう。
私はゆっくりと首を振る。
「歩きながら話そうか。」
そう言って、私達は歩き出す。
何処へ向かっているのかは分からない。
ただ、颯磨くんに合わせて、歩く。
隣にいる。
それだけで、幸福……。
「嫌いになった?だから避けてるのかな……?だとしたら、どうして嫌われたのか……、全部知りたい。」
それを聞いた瞬間、何だかほっとした。
ずっと遠くの存在になってしまったのではないかと思っていたけれど、話し方も、声も、口調も、いつもの颯磨くんのままだった。
「き、嫌いじゃない……。」
目は合わない。
2人ともずっと足下を見て、ただ淡々と歩いているだけ。
「なら良かった。」
「でも、避けてたのは本当。」
ちゃんと全部、言わなくちゃいけないと思った。
ちゃんと言った上で、関わりを断とう。
「どうして?」
「颯磨くんに……、迷惑がかかると思ったから。」
「何それ。」
「せっかく颯磨くんがクラスに戻れたのに、私なんかに構って、私を助けたりしたら、女子達の機嫌が悪くなっちゃって、また颯磨くんがクラスにいられなくなったらって考えたら嫌だったから……。」
一気に全てを吐き出して、なんだか少しすっきりしたような気がする。
「じゃあ、誤解されるのが嫌だって言ったのは……!」
「そうだよ。颯磨くんが誤解されちゃうのが、嫌だったの。」
「なんだ。そっか。」
颯磨くんが、溜息のようなものをついた。
「日奈子は京のことが好きだからさ、僕との関係を誤解されたら都合が悪いって、そういう意味だと思ってた。」
あっ……、そうだ。颯磨くんに、私が京くんのことが好きだって、誤解されてるんだった……。
私はどう誤魔化したら良いのか分からなくて、苦笑いをした。
「嫌われてないなら、良かった。僕、日奈子と京のこと、応援するから!」
え……、ど、どうしよう……。
やっぱり、ちゃんと言わなくちゃ。
私の好きな人は、京くんじゃないって……!
「あ、あの……、」
私が言いかけたその瞬間、
「ここ。」
颯磨くんが足を止めた。
「昔、遊園地だった所。」
私はそこでやっと、上を見上げる。
すると、颯磨くんと、目が合った。
ドクンッ……!
こら!
今、何考えた?
駄目だよ。
その考えだけは駄目だよ。
だって、颯磨くんは私を好きじゃない。
京くんと私を応援してくれるって言ったのは、きっと私のことを何とも思っていないからで……。
「結構、好きな場所なんだ。」
「へえ。」
「あ、クレーンゲーム。」
見ると、近くにクレーンゲームが置かれていた。
元々、遊園地だったららしいけど、今はクレーンゲームと観覧車しかない。
「好きなの?クレーンゲーム。」
「割と。」
颯磨くん、上手そうだな。
「やる?」
「いいの?」
「うん。私は苦手なんだけど、颯磨くんが上手そうだから、見てみたい!」
そう言うと、颯磨くんは、手際よくお金を入れて、プレイし始めた。
「何か欲しいものある?」
デタラメに置かれているぬいぐるみを眺めると、かつて健吾とクレーンゲームをした時にあった、うさぎのぬいぐるみを見つけた。
「あっ……。」
でも、駄目だ。
これ以上、颯磨くんに迷惑かけちゃ駄目だよ。
どうせ明日以降は、ほとんど関わらない。
私が一瞬でも、重荷になってしまっては駄目だ。
「あの……、どれでもいいよ。」
どれでも嬉しい……。
自分にそう言い聞かせる。
「そう。分かった。」
そして、颯磨くんは、ゲームを操作し始めた。
その動きは、凄く滑らかで、ずっと見ていたかった。
颯磨くん……、真剣な瞳……。
ドクンッ
駄目……!!
こんなのただの錯覚……!!
別に、もう好きなんかじゃないっ……。
やがてクレーンは、1匹の動物を捕らえた。
っ……!!!!!
クレーンに引っかかっている動物は……、
うさぎだった。
ど、どうして……。
いや、こんなの偶然に決まってるよ。ね?
そのままぬいぐるみが手元に落ちてきた。
「はい。」
「あ、ありがとう……!」
偶然だとしても、本当に嬉しい……!!
「これ、欲しかったんでしょ?」
えっ…………!?!?
「ど、どうして……、分かったの……?」
「目の動きとかかな?見てれば分かるよ。」
そんな……。
凄い……。
「ありがとう。凄く嬉しい……!」
「喜んでもらえて良かった。」
しばらく、そのうさぎを眺めていた。
「ねえ、少しだけ言いたいことがあるんだ。だから、観覧車、乗らない?」
えっ……!
か、観覧車っ……!?
颯磨くんと2人でっ……!?
も、持つかな……?
気持ち。
ねえ、取り返しのつかないことになんて、ならないよね……?