キミがくれたコトバ。
24.5
休み時間になると、橋田さんはたちまち囲まれた。
……男子達に。
「颯磨、橋田さんの隣とかラッキーだな〜!!」
男子は保健室登校になる前から、僕のことを、いじめず、親しくしてくれていた。
「別に、普通だよ。」
「お前は取り巻きがいるんだから、橋田さんまで奪うなよ〜!」
「奪わないって。僕は他に、好きな人がいる。」
ついそう言ってしまってから、後悔した。
言ったことを後悔しているのではない。
日奈子のことを、まだ好きでいる自分や、諦められていない自分がいることに、嫌気がさして、そして口に出すことで、更に忘れられなそうで……、だから後悔した。
「またまたご冗談を〜。」
「ま、颯磨も変わらないな。」
そう言って、一人の男子が僕の肩をバシバシ叩く。
「痛いって。」
「ごめんごめん。でもさ……、俺、颯磨が戻って来てくれて、本当に良かった。」
「俺も!颯磨にはずっと憧れてたし。」
憧れ……?
「頼りになるしな!」
頼りに……?
「おかえり。」
み、みんな……。
僕のことなんて、とっくに忘れているだろうと思っていた。
気にかけていてくれたなんて、知らなかった。
「……ただいま。ありがとう、嬉しい。」
「今度何かあったら、1人で抱え込まないで、ちゃんと相談しろよな!」
「そうそう。女子って分かんない所でやるから怖いんだよな〜。」
嬉しい。
戻るのが嫌だったけど、少しだけ、戻って来て良かったと、純粋に思うことができた。
しかし、ホッとしたのも束の間。
放課後から、僕の予想していた出来事が、少しづつ起こり始めた。
放課後、僕は教室を出てから、何だか胸がざわついた気がした。
忘れ物か?いや……。
何か良くないことが起こる気がして、教室に戻る。
すると、すぐに女子の話し声が聞こえた。
「橋田さん、どうする?」
やっぱり、橋田さんの話か……。
「どうするって?」
「うちらのグループにいれるかどうかだよ。」
僕のクラスでは、女子のグループが2グループ存在する。
1グループ目は、主に僕の取り巻き。
それと同時に、前に僕をいじめていた連中。
2グループ目は、それ以外。
真面目な感じで、休み時間も勉強している。
まあ、グループといっても、2グループ目は、2人しかいないけど。
「入れても良いと思うんだけどね〜。」
僕にとっては、意外な意見だった。
「だって、顔めっちゃ可愛いじゃん?天使じゃん?グループに入れなかったら、うちらのグループ、価値なくなるよ?」
「それなー。」
別に元々、特別価値があるとも思わないけど、まあ、彼女達のグループ以外のグループが目立つことが許せないということだろう。
「でもさー、橋田さん、何ていうかさー。」
「うん、分かる分かる。」
「可愛いことを鼻にかけてる感じ?」
「そうそう。美人はみんなそう。」
始まった。
胸のざわつきの正体は、やっぱりこれだ。
「何か王子に手出しそうじゃない?」
「絶対、出すー!」
何でそこで僕が出てくるんだよ……。
「そう考えると入れたくないよねー。」
「分かるわー。」
何が『分かるわー。』だよ。
1人くらい反論しろよ。
「じゃあさ、こうしない?」
「何何?」
「一旦は入れておいて、裏切りそうだったら、すぐに外す。どう?」
「いいね!」
「うん!そうしよう!」
「じゃ、決定〜。」
そろそろ僕が注意をしに行こう。
クラス内でいじめが起こるのは、嫌だから。
橋田さんにも、僕のような思いはしてほしくない。
いや、橋田さんじゃなくても、あんな思いは、誰もしちゃいけない。
そう思って、1歩踏み出した時……、
カタンッ
背後で小さな物音が聞こえた。
すぐに振り替えると……、
「橋田さん……!」
まさか今の……、全部聞いてたのか……!?
橋田さんは、何も言わずにその場を離れた。
その光景が……、何故か日奈子と被ったんだ。
僕の、大切で……、守りたい人……!
「橋田さん……!!」
僕は橋田さんを追いかけて、その腕を掴んだ。
「橋田さん……。」
橋田さんが、ゆっくりと振り返る。
「大……丈夫?」
なわけないよな……。
「大丈夫です。慣れてますから。」
意外な反応だった。
何だろう、この子……、意外とさっぱりしてる……?
「でも、」
「水瀬くんだよね。」
「ああ。そうだけど。」
「私と同じ匂いがする。」
……は?
いや、勿論「匂い」っていうのは比喩表現のことだけど、それにしても分からない。
「もしかして、全国模試、市内で1位とか?」
……!
「そ、そうだけど。」
何で分かった……?
テレビか?
いや、あのテレビは、この辺の地域でしか放送されていなかったはず。
「やっぱり。私も前に住んでた市内では1位だったの。」
そ、そうだったのか。
「じゃあ、ライバルだね、水瀬くん。」
橋田さんが、ニコッと微笑む。
初めて笑った。
自己紹介の時も、微笑んではいたけど、あれは作り笑いに見えた。
今のは、何というか……、本物のような気がした。
「負ける気はしないけどね。」
「私こそ。」
さっぱりしつつ、明るい子なのかもしれない。
「それよりさっきの……、」
「大丈夫って言ってるでしょ。」
「でも……、」
「大丈夫だから!!それより、次の定期テストで勝負ね!」
え……?
これは宣戦布告……?
「そういう楽しみがあれば、学校も頑張れるから。」
そう言った橋田さんの瞳は、少しだけ切なそうだった。
「なんだ。やっぱり気にしてるんじゃん。」
「うるさい!とにかく決まりだからね!」
そう言うと、橋田さんは背を向けて、歩き出した。
しかし、1度だけ振り返って、
「隣の席が、水瀬くんで良かった!絶対負けないからね!」
と言って、帰っていった。
日奈子とは、大分タイプが違うようだ。
でも、一瞬だけ重なった。
そういえば、なんか笑い方とか似てるし……。
いやいや……、日奈子のことはもう忘れよう。
京との幸せを願うって、決めたんだから。
休み時間になると、橋田さんはたちまち囲まれた。
……男子達に。
「颯磨、橋田さんの隣とかラッキーだな〜!!」
男子は保健室登校になる前から、僕のことを、いじめず、親しくしてくれていた。
「別に、普通だよ。」
「お前は取り巻きがいるんだから、橋田さんまで奪うなよ〜!」
「奪わないって。僕は他に、好きな人がいる。」
ついそう言ってしまってから、後悔した。
言ったことを後悔しているのではない。
日奈子のことを、まだ好きでいる自分や、諦められていない自分がいることに、嫌気がさして、そして口に出すことで、更に忘れられなそうで……、だから後悔した。
「またまたご冗談を〜。」
「ま、颯磨も変わらないな。」
そう言って、一人の男子が僕の肩をバシバシ叩く。
「痛いって。」
「ごめんごめん。でもさ……、俺、颯磨が戻って来てくれて、本当に良かった。」
「俺も!颯磨にはずっと憧れてたし。」
憧れ……?
「頼りになるしな!」
頼りに……?
「おかえり。」
み、みんな……。
僕のことなんて、とっくに忘れているだろうと思っていた。
気にかけていてくれたなんて、知らなかった。
「……ただいま。ありがとう、嬉しい。」
「今度何かあったら、1人で抱え込まないで、ちゃんと相談しろよな!」
「そうそう。女子って分かんない所でやるから怖いんだよな〜。」
嬉しい。
戻るのが嫌だったけど、少しだけ、戻って来て良かったと、純粋に思うことができた。
しかし、ホッとしたのも束の間。
放課後から、僕の予想していた出来事が、少しづつ起こり始めた。
放課後、僕は教室を出てから、何だか胸がざわついた気がした。
忘れ物か?いや……。
何か良くないことが起こる気がして、教室に戻る。
すると、すぐに女子の話し声が聞こえた。
「橋田さん、どうする?」
やっぱり、橋田さんの話か……。
「どうするって?」
「うちらのグループにいれるかどうかだよ。」
僕のクラスでは、女子のグループが2グループ存在する。
1グループ目は、主に僕の取り巻き。
それと同時に、前に僕をいじめていた連中。
2グループ目は、それ以外。
真面目な感じで、休み時間も勉強している。
まあ、グループといっても、2グループ目は、2人しかいないけど。
「入れても良いと思うんだけどね〜。」
僕にとっては、意外な意見だった。
「だって、顔めっちゃ可愛いじゃん?天使じゃん?グループに入れなかったら、うちらのグループ、価値なくなるよ?」
「それなー。」
別に元々、特別価値があるとも思わないけど、まあ、彼女達のグループ以外のグループが目立つことが許せないということだろう。
「でもさー、橋田さん、何ていうかさー。」
「うん、分かる分かる。」
「可愛いことを鼻にかけてる感じ?」
「そうそう。美人はみんなそう。」
始まった。
胸のざわつきの正体は、やっぱりこれだ。
「何か王子に手出しそうじゃない?」
「絶対、出すー!」
何でそこで僕が出てくるんだよ……。
「そう考えると入れたくないよねー。」
「分かるわー。」
何が『分かるわー。』だよ。
1人くらい反論しろよ。
「じゃあさ、こうしない?」
「何何?」
「一旦は入れておいて、裏切りそうだったら、すぐに外す。どう?」
「いいね!」
「うん!そうしよう!」
「じゃ、決定〜。」
そろそろ僕が注意をしに行こう。
クラス内でいじめが起こるのは、嫌だから。
橋田さんにも、僕のような思いはしてほしくない。
いや、橋田さんじゃなくても、あんな思いは、誰もしちゃいけない。
そう思って、1歩踏み出した時……、
カタンッ
背後で小さな物音が聞こえた。
すぐに振り替えると……、
「橋田さん……!」
まさか今の……、全部聞いてたのか……!?
橋田さんは、何も言わずにその場を離れた。
その光景が……、何故か日奈子と被ったんだ。
僕の、大切で……、守りたい人……!
「橋田さん……!!」
僕は橋田さんを追いかけて、その腕を掴んだ。
「橋田さん……。」
橋田さんが、ゆっくりと振り返る。
「大……丈夫?」
なわけないよな……。
「大丈夫です。慣れてますから。」
意外な反応だった。
何だろう、この子……、意外とさっぱりしてる……?
「でも、」
「水瀬くんだよね。」
「ああ。そうだけど。」
「私と同じ匂いがする。」
……は?
いや、勿論「匂い」っていうのは比喩表現のことだけど、それにしても分からない。
「もしかして、全国模試、市内で1位とか?」
……!
「そ、そうだけど。」
何で分かった……?
テレビか?
いや、あのテレビは、この辺の地域でしか放送されていなかったはず。
「やっぱり。私も前に住んでた市内では1位だったの。」
そ、そうだったのか。
「じゃあ、ライバルだね、水瀬くん。」
橋田さんが、ニコッと微笑む。
初めて笑った。
自己紹介の時も、微笑んではいたけど、あれは作り笑いに見えた。
今のは、何というか……、本物のような気がした。
「負ける気はしないけどね。」
「私こそ。」
さっぱりしつつ、明るい子なのかもしれない。
「それよりさっきの……、」
「大丈夫って言ってるでしょ。」
「でも……、」
「大丈夫だから!!それより、次の定期テストで勝負ね!」
え……?
これは宣戦布告……?
「そういう楽しみがあれば、学校も頑張れるから。」
そう言った橋田さんの瞳は、少しだけ切なそうだった。
「なんだ。やっぱり気にしてるんじゃん。」
「うるさい!とにかく決まりだからね!」
そう言うと、橋田さんは背を向けて、歩き出した。
しかし、1度だけ振り返って、
「隣の席が、水瀬くんで良かった!絶対負けないからね!」
と言って、帰っていった。
日奈子とは、大分タイプが違うようだ。
でも、一瞬だけ重なった。
そういえば、なんか笑い方とか似てるし……。
いやいや……、日奈子のことはもう忘れよう。
京との幸せを願うって、決めたんだから。