キミがくれたコトバ。
33.5



「テッテレッテレー!ここでのミッションは、2人きりで、かつ、密室された空間で、あんなことやこんなことをしちゃいましょう!」

は……?

第4チェックポイントまで辿り着いた僕達だけど……、よく分からない部屋に入れられ、鍵をかけられたようだ。

「教室がこんな空間になっちゃうなんて、生徒会もかなり手が込んでいるみたいね。」

橋田さんが言った。

「確かに。それに、10分経たないと、鍵は解放されないみたいだし。」

壁に貼ってある紙に、そう書いてあった。

10分って……、長いだろ……。

そんなに話すこと、あるか?

「ねえ、橋田さ……」

「愛美って呼んでよ。私も颯磨って呼んで良いかな?」

「あ、うん。別に良いよ。」

呼び方にこだわりはない。

だから、嫌がらせでつけたあだ名とか、そういうあだ名を除いては、どんな呼ばれ方でも良い。

「丁度良かった。」



「私、颯磨に言いたいことがあるの。」

言いたいこと……?

すると、橋田さんが、僕との距離を一気に縮めた。

え……!

な、何……?

っていうか、この空間、本当に2人きりだ……。

当たり前だけど……。

何故か、き、緊張する……。

「橋田さん……?」

「愛美だってば。」

「あ、ごめん……愛美……?」

その瞬間、橋……愛美が抱きついてきた。

!?!?

「愛……美……!?」

「好き。」

っ……!?!?!?

「私、颯磨のことが好き。」

えっ………!

「颯磨は日奈子ちゃんのことが好きだって分かってる。一番近くにいるのが日奈子ちゃんだってことも、分かってる……。」

声が震えている。

「でも……、2番でもいいから……、私を選んでくれないかな……?」

愛美が顔を上げた。

やっぱりこの子は、誰が見ても美少女なんだ
ろうな。

でも、何故だろう……。

愛美を見て、抱きつかれている今でも、頭に浮かぶのは愛美じゃない。

失礼なことかもしれないけれど……。

「あのね……、澄春と日奈子ちゃん、付き合うんだってさ。」

え……………。

澄春くんと、日奈子が……?

付き合う……………?

「ショックなこと言っちゃってごめん。」

「別に、大丈夫。」

大丈夫なんかじゃない……。

もう、取り返しがつかないくらい、好きになってた。

でも、なかなか自分の気持ちに正直になれなくて……。

そうやって、もたもたしていたから……。

「仕方ない。」

仕方ない……?

本当に?

それで良いのか……?

「だから、良かったら……、私と付き合ってくれないかな……?」

「ごめん。」

即答してしまった。

もう少し考えれば良かったかもしれないと、少しだけ後悔した。

「やっぱり僕、日奈子が好き。」

「でも日奈子ちゃんは……!」

「それでも好きだから。ちゃんと日奈子に聞くよ。それで、日奈子の口から付き合うことを直接聞いたら、自分の想いを告白して、それで諦める。」

この現実は、終わらせるなら終わらせるで、終わらせないなら終わらせないで、はっきりした答えを、ずっと出さないまま、気づかないようにしていた僕が生み出してしまった現実だ。

だから、今度こそ、きちんと決着をつけよう。

「じゃあ、そうしたら、私と付き合ってくれる?」

「それは……、考えておく。」

「分かった。ありがとう。」

カチャ

10分経ったのだろう。

鍵が開いた音がした。

多分、鍵が開いただけで、まだ中にいたいペアはいて良いんだろうけど、僕達は外に出ることにした。

第5チェックポイント。

ザワッ

何かが起こりそうな予感がする。

そして、僕の予感は、だいたい当たるんだ。
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