キミがくれたコトバ。
33.7



「第5チェックポイント〜!密室を経験して、更に絆が深まった2人を、見せつけちゃお〜!スタート!!」

またかよ。

「あの、相手のペアは?」

「さっきと同じペアで〜す!」

……は?

すると向こうから、愛美と颯磨くんが腕を組みながら歩いてきた。

おい、どういうことだよ、颯磨くん。

何で愛美と腕組んでんだよ……!

「あ、日奈子ちゃんじゃん。」

愛美が言った。

日奈子ちゃんに颯磨くんとの仲の良さをわざと見せつけてるんだ。

やっぱり最低だよ。

密室で何があったのか知らないけど、愛美のことだから、また卑怯な手を使ったんだろうな。

「あのね、私達、付き合うことになったの。」

っ……………!!!

「ねー、颯磨!」

「え。いや……!」

「颯磨ったら私にデレデレで。」

颯磨くんの言葉を遮った。

多分、愛美の嘘だ。

「颯磨の意外な一面まで見られたしね。」

そういえば、何故か呼び捨てだし……。

それより日奈子ちゃん……!

やっぱり……。

泣きそうじゃん……。

「日奈子ちゃん。」

僕は慰めるように頭を撫でる。

お願いだから、そんな顔しないで……。

ふと颯磨くんの表情を伺うと、思ったより慌てた顔をしていた。

やっぱり、2人が付き合ってるなんて嘘じゃん。

「ところで、澄春達も付き合ってるんでしょ!」

愛美が、『話しを合わせて!』とでも言うかのような顔で言った。

愛美、僕はお前の味方じゃない。

仲良くなんて、やっぱり無理だ。

だから……、

「いや、僕達は……、」

「やっぱり!付き合ってるんだね!おめでとう!」

遮られた……。

「あ、そういえば、当然キスはしたでしょ?」

っ………キス………!?

「密室があったんだもん。キスしないカップルなんていないでしょ?ね?」

その言い方じゃあ、まるで自分達がキスをしたと言っているようなもんじゃないか……!

「ね、颯磨。」

「そうなのかな?」

颯磨くんもぽかんとしてないで、キスしてないって否定して!

そして日奈子ちゃんも、悲しそうな顔しないでよね……。

「僕達はキスしてないよ。」

今、愛美以外の中で一番余裕がらあるのは僕だ。

だから僕がちゃんとしなきゃ。

「え〜!してないの!?」

「うん、だから今ここでする。」

やっぱり、慌ててるよ颯磨くん。

「す、澄春くん……!?」

日奈子ちゃんも慌ててる。

「見せつけるところだから良いでしょ。」

それに、僕は日奈子ちゃんにキスはしないつもりだよ。

僕は日奈子ちゃんの肩に手を置いた。

颯磨くん、いいの……?

かなり焦ってるみたいだけど。

今が僕達を止めて日奈子ちゃんと結ばれる、ラストチャンスだよ?

これを逃したら、もう一生無理だから。

だから止めてよ。

ゆっくりと、顔を近づける。

ちゃんと止めて。

その為に、京くんや大輔くんにまでお願いしたんだから。

日奈子ちゃんが目を瞑る。

颯磨くん……、本当に良いのかな……??
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