キミがくれたコトバ。
39



逃げちゃった……。

せっかく私の名前、呼んでくれたのに……。

私、颯磨くんと橋田さんが付き合う前に、ちゃんと言いたかったんだ。

颯磨くんが好きです。

って。

その為に走って颯磨くんを探して、ようやく見つけたのに、それなのに……。

直前で怖くなったんだ。

フラれたら、全部なくなっちゃうのかなって……。

でも、大丈夫。さすがに追いかけては来てな……、

「日奈子!」

!?

追いかけてきてる ……!?!!!!!!

わ、ど、どどどうしよう!?

私は慌てて、取り敢えず保健室に入ると、ベッドに潜り込んで、カーテンを閉めた。

ガラガラガラ……!

その直後、保健室のドアを開ける音が聞こえてきた。

「日奈子……?」

わ、私、何でこんな簡単なところに隠れたんだろう……!?

もしかして……、見つけて欲しかった……?

そ、そんなわけ……!!

「日奈子。そこか?」

カーテン越しに声が聞こえる。

でも、どうして私が保健室にいるって分かったの……?

そんなの、簡単に分かる。

だって颯磨くんはエスパーみたいだから。何でもお見通しなんだ。

「そこにいると予想して、一方的に話す。日奈子は一切、返事をしなくてもいい。」

こんなに近くにいるのに……。

「伝えたいことが一つだけあるんだ。最後まで伝え終わっても日奈子が出て来なかったら、日奈子は元からここにはいなくて、今から話すことも、全部なかったことにする。」

無かった……ことに……?

「こんなやり方、卑怯だって思うかもしれない。こんなことまでしなくちゃ、本当のことを怖くて伝えられないヘタレな僕を許して欲しい。でも勿論、許したくなかったら許さなくても、別にいい。」

なっ……。

颯磨くんと話していると、いつも不思議な気持ちになる。

何を言おうとしているのか、全然分からないのに、安心できる。

「言うぞ。」

緊張が走る。

何を、言われるの……?

颯磨くんが一呼吸置いた。

「日奈子……、好きだ。」

っ………………!

えっ………………!えっ………………!?!?

えっ!えっ!えっ!?

な、何、何て言ったの……!?これは、夢……!?

颯磨くんが橋田さんと付き合うのが嫌で、人生色々とこじらせた私が聞いている幻聴……!?

それとも、妄想……!?

「前に観覧車の中で、今は好きじゃないって言っただろ?あれ、嘘だ。」

っ……!!

う、嘘っ………だったの……?

「本当はずっと好きだったんだ。初めて会って、キスした時から、君のことが気になってて……。学校が同じだって分かって、一緒に過ごしているうちに、その気持ちは、ますます消せなくなって……。」

キスっ…………。

!!!!!

そ、そうだ、わ、私……、颯磨くんと、一度っ……!!

「愛美のことが気になってるっていうのも嘘だったんだ。日奈子が、京とか澄春くんに取られるのを認めたくなくて、自分の気持ちを押し殺そうとして、ついた嘘だ……。」

そう……だったの……?

だったら、私のせいだ……。

私が、勘違いさせるようなことを言ったから……。

「でも、僕がこんなに君を好きでも、君が好きなのは僕じゃないって知ってるから……。」

違う……。違うよ……!

「だから、この気持ちを押し付けたら迷惑になるんじゃないかって……。」

全然、迷惑なんかじゃない。違うよ。私だって、

私だって……!!

その瞬間、気づいたら、私はカーテンを開いていた。

「ひ、日奈子……!?」

私はゆっくりと颯磨くんを見つめる。

「違うよ……。私だって、颯磨くんが好きだよ……!」

い、言ってしまった……!!

その瞬間、颯磨くんが私の腕を強く引いた。

そして……、

唇が重なった。
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