キミがくれたコトバ。
39.8



「これが僕の過去の全てです。」

副会長が全てを話し終えた。

なるほど。副会長は、賭けで日向子ちゃんと付き合っただけで、もとから好きではなかったんだ。

澄春が、1番悪いのは副会長の友達って言ってたけど、確かにそうだ。

この人と手を組めば……、

「でも、」

副会長が言った。

「僕は手を組むつもりはありません。」

…………えっ?

「な、何で?私も貴方も、目的は同じでしょ?日向子ちゃんを陥れたい。そうでしょ?」

すると、副会長は静かに首を横に振った。

「本当は…………だったんだ…………。」

副会長が小さな声で何かを呟いた。

「え?」

私は聞き返す。

「好き……だったんだ。」

「は?誰を?」

「日向子を…………。」

!?!?

な、何を言ってるの!?

「賭けに勝っただけでしょ!好きなわけ……!!」

「もう、自分の気持ちから目を逸らし続けるなんて無理なんだ!!」

副会長が大きな声を出した。

意外。いつでも冷静な人なのかと思ってた。

「あいつは前から身長のことで、一部の奴から色々言われてた。」

副会長が語り出した。そして、それと同時に、タメ口になった。

何かの仮面が、1枚剥がれたかのように。

「僕は初めからそんなの気にして無かったけど、お金に目がくらんで、賭けに応じた。」

お金って、そんなに大事……?

「賭けに勝った時点で、直ぐに別れれば良かったじゃない。」

副会長は、再び首を横に振った。

「別れたら、その2万を返す契約だったんだよ。だから、高校に入って、賭けをした奴と離れるまでは、別れられなかった。それに、その2万は直ぐに使ったから、返せなかった。」

「そんな賭け、どうしてやったの?中学生には大金かもしれないけど、思ってみれば、たったの2万でしょ?そんなにお金が好きなの?」

「……そうだよ。……大好きだったんだ。」

副会長は、俯いて、自分を嘲笑うかのような顔で答えた。

馬鹿じゃないの?

「だから僕は……、」

「もういい。分かったから。貴方とは組めないって。じゃあね。」

私は副会長に背を向けた。

「待て。」

呼び止められて、振り返る。

「何?」

「君も、そろそろ気づいたらいいよ。」

は?意味わかんない。何なの、急に。

「僕と君はよく似ている。性格や考え方や感じ方が。」

考え方が同じだったら、私と手を組むはずでしょ。似てなんか……。

「ある一面では、澄春くんをいじめたり、日向子を陥れようなんてしたくなかった。でも、ある一面の君がそれを許さなかった。そうだろう?」

「な、何言ってるのよ!そんなわけないでしょ!」

「ほら、そうやって虚勢を張って、誤魔化そうとする。僕と同じように。」

「だ、だったら何なの!?似てるから何だって言うの!?」

副会長は、不敵な笑みを浮かべた。

「ちゃんと自分の気持ちと向き合ってみる。そういう意味でなら、手を組めるけど?」

副会長が、私の耳に唇を近づけた。

「似たもの同士、付き合ってみる?」

「ど、どういう意味?」

「恋人になるってこと。」

っ!?

はっ!?えっ!?

「ば、馬っっ鹿じゃないの!?!?」

こ、恋人なんて……!

「もう付き合いきれない!さようなら!」

私は急いでその場を去った。

副会長は、もう私に呼びかけなかったし、追いかけてもこなかった。

『ほら、そうやって虚勢を張って、誤魔化そうとする。』

その言葉が、私の頭の中に張り付いて、離れなくなった。
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