キミがくれたコトバ。
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慌てて颯磨くんを追いかけようと思い、玄関を出ると、颯磨くんはすぐ近くで待っていてくれた。

「やっと二人きりになれた。」

颯磨くんが、そう言って微笑んだ。

「ごめんね、私のせいで……。私、保健室登校を始めた時から……、ううん、明人くんと別れた日からずっと、颯磨くんに迷惑かけてばかりで……。」

「違う。」

颯磨くんが首を横に振った。

「僕は1度も迷惑に思ったことなんてない。ちゃんと王子になれなかったから。『王子』って呼ばれてるくせに、みんなの期待に応えられなかったから。だから、結果的に日奈子を傷つけることに……。」

今度は私が首を横に振った。

「颯磨くんは王子じゃないよ。」

「……え?」

颯磨くんが、驚いたような、意外そうな顔をした。

「前に、私は王子のこと、何とも思ってないって言ったことあったでしょ?」

「覚えてる。僕の他に好きな人がいるとも言ったよな。京でしょ。」

やっぱり、勘違いしてたんだ。

『王子=颯磨くん』って。

「私はずっと、ずっと……、颯磨くんが好きだった。」

っ……。

何だか、また告白したみたいで、恥ずかしい……。

「私が何とも思っていないのは、『王子と呼ばれている颯磨くん』だよ。」

感情なんていうものは、いつも複雑で、「言葉」という便利なツールを使っても、自分の感情を100%正確に伝えることはできない。

共通の言葉でも、私には私なりの、颯磨くんには颯磨くんなりの解釈があり、それは、どんなに言葉を上手に使っても、微妙にずれてしまうのだと思う。

それでもいい。難しく考えなくていい。気持ちを言葉に乗せるんだ。

颯磨くんは、みんなとは違う。

同じ人間なんていないけど、颯磨くんは、明らかに違う。

だからこそ、私は安心できる。

大丈夫。

颯磨くんになら、ちゃんと伝わる。

私の気持ちを、いつだってちゃんと受け止めてくれる。

「王子の他に好きな人がいるっていうのも、颯磨くんのことだよ。」

やっと、言える。

「私は……、私が好きなのは、優しくて、いつも私を守ってくれて、励ましてくれて、何でもすぐに分かって、でもちょっと不器用な颯磨くんだよ……。」

言葉が、次々に溢れ出して、止まらない。

こんな感覚……、初めて……。

「王子様みたいだから好きなんじゃない。颯磨くんが王子だって、そうじゃなくたって関係ない。颯磨くんは颯磨くんだから……、だから好きなの……!」

自分の全てをさらけ出せる。

そんな存在が颯磨くんなんだ。

颯磨くんが私をじっと見つめている。

そして私も、見つめ返す。

もう絶対、颯磨くんからも、自分の感情からも、目を逸らしたりしないから。
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