私が恋した愛しい彼。
ドクドクドクドクドクドク……



脈打つ音が聞こえるんじゃないかってくらい、心臓がうるさい。




「みいちゃんってさ、男と手。繋いだことある?」



「い、今、とっても心臓がドキドキしてて、爆発しそうで、止まってるしまいそうです。」




「質問と違う答えが帰ってきたし笑」




頭がぐるぐるして、真っ白だ。
周りの音なんて聞こえないくらい、鮮明に椎名くんの声が聞こえる。



「みいちゃんってさ、付き合ったことないでしょ?」



も、もう、いっそのこと男の人が苦手ですって言っちゃう?!言おう。って、思って口を開いた瞬間、



椎名くんは私が歩く道を遮り、目の前に立つ。



「彼氏ができたことがないならさ、俺を初めての彼氏にしてくれない?


みいちゃんに俺のこと知って欲しい。俺のこと好きじゃなくてもいいから。」




彼氏?
彼氏なんて考えたことない。
あまり話したこともない人が、私の何を気に入って告白してきたんだ。


「椎名くん、私のこと好きじゃないでしょ?それに私も「好きだよ。」え」



好きだよって言った椎名くんの目は真剣で、純粋にかっこいいって思った。でも……。



「好きじゃなくてもいいって…。そんなの椎名くんを傷つけるだけだよね。
それに私、実は男の人が苦手なんだ。苦手って言うか怖い、かな。
でも、椎名くんのおかげで男の人は実は怖くないのかもって最近思ったんだ。
これからも話しかけたりしてくれると嬉しいな。



ありがと、好きって言ってくれて。
素直に嬉しかったよ。」





これが私の今の気持ち。




「そっか。初恋ってよく実らないっていうよね。
でも、俺のおかげで男をそんなに怖いって思わなくなったんでしょ?なら、チャンスあるよね。頑張んなくちゃ、みいちゃんに振り向いてもらえるように。」



え。
そんなこと言ってくれる人初めてで私は驚いた。

いつも人をフるとき、怒鳴られるから。
暴言を吐かれるから。

大きな声を出す人が嫌い。
その時に知ったから。


でも、フられた相手にここまで優しくできる人ってすごいと思う。


尊敬できるくらいに。




「んー。俺フられたけど、どうしよっか。勉強とかフった男とできる?」


ここまで気が利く人って、はぷな以外にもいないよね。
すごいね。


「勉強かぁ…。大丈夫だよ。」



スっと口元に手を持っていく。


「それ。」


「え?」



「みいちゃんが嘘つく時は、口を隠すよね。奈々ちゃんとか香世ちゃんと好きな人について話した時あるじゃん?
実は俺、気になって聞いちゃって…。その時、好きな人は後輩かなって言ってたでしょ。
でも、みいちゃんは年上が好きそうだし、ってか男が苦手なんでしょ。」




わーお、、バレてる。
この人は超能力者か。
お母さんからも言われたっけ。
嘘つくとき、口を隠すって。
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