クジラとごはんを食べた猫
「じゃあ、君は海にかえってしまうんだね」


ネモは潮を浴びて濡れそぼった顔に、さびしげな表情を浮かべました。
だって、せっかく一緒にごはんを食べる相手ができたのに、もうお別れなんですから。


けれど、クジラは「しょうがないな」と笑って言いました。


「こっちに来て、僕にさよならのハグをしておくれ」


ネモがクジラをぎゅうっと抱きしめると、すべすべした体をすり寄せてくれました。


「今日はさよならだ。だけど、ずっとじゃないよ」


「本当に?」


「本当さ。だって僕たち、ともだちじゃないか」


それでもネモの目から大粒の涙が流れました。
海の水に似た、ちょっとしょっぱい涙でした。
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