泣きたくても泣けない
違い
[今日は帰らないから。これで適当に食べて]
少し乱雑な、お母さんの字。
このメモと一緒においてあるのは、一万円札。
学校から帰ってきたとき、すでにお母さんはいなかった。
お母さんとはもう、1週間くらい顔を合わせてなかった。
「うー、さむ……。」
制服のまま、コンビニへ行く。
あまり高いものを買うと怒られるから……
「これでいいか。」
私はおにぎりふたつとスープを片手に持ってレジへ向かう。
なるべく千円以内に収めたかった。
『…その制服は…笹原学院?』
急に高校名を言われて、はっと顔を上げると、レジをうっていたのは藤井先輩だった。
……まあ、多分彼は私のこと知らないけど。
「藤井先輩、ですよね…?」
『あ、俺のこと知ってるの?』
有名ですから、っていう言葉を飲み込んで、もちろんです、とだけ答えた。
なんだか、有名ですからなんて失礼な気がして。
「じゃ、じゃあ、、失礼します…。」