人面瘡
「絆創膏の裏に書く名前は何でもいいって書いてある。だから、恋が実るジンクスだなんて嘘をついたんだな」


雄生が険しい表情でそう言った。


「で、でも呪いなら誰の名前でもいいってことはないと思わない? せめて、呪いをかけている相手の名前を書かせるとかさ」


「それが難しいとわかっていたから、この呪いは形を変えて簡単になったんじゃないのか?」


「そんな……」


あたしはスマホに視線を落とし、泣きそうになってしまった。


目の奥がジンジンと熱くなってくる。


「呪いだ呪い。ザマーミロ!」


女の顔がそう言ってゲラゲラと笑い声を上げる。


「うるさい!」


あたしはそう叫び、女の口にガムテープを貼った。


ガムテープの下でモゴモゴと口が動いている感覚がするけれど、無視した。


あたしは自分のスマホを取り出して沙和から届ているメールを確認した。


今日も連絡なしに休んでしまったから、心配してくれている。
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