人面瘡
「大丈夫。心配しなくていい」


雄生がそう言ってくれた時、「死ね死ね死ね」と呟くような声が聞こえてきてハッとした。


見れば膝に貼ってあったガムテープがはがれて女がニタリとした笑顔を浮かべている。


あたしは咄嗟にガムテープを貼ろうとしたが、雄生がそれを止めた。


「死ねなんて、趣味が悪い言葉だな」


雄生は傷口を睨み付けてそう言った。


女はゲラゲラと笑い声を上げて雄生を見る。


「この女は死ぬ。必ず死ぬ。私が呪い殺す」


決して声量は大きくないものの、その呪いの言葉は体中に駆け巡り毒のようにあたしをむしばむ。


「うるさい、黙れ!」


雄生は叫び、立ち上がった。


そのままキッチンへと向かうと、包丁を手に戻って来た。


「雄生……」


あたしは青ざめて雄生を見た。
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