人面瘡
「どうして、そんなことを!」


声を荒げる雄生を、あたしは止めた。


「そもそも、おつねの呪いなんて信じていないからだ」


キッパリと言い切る春子のお父さん。


その目はまっすぐにあたしたちを見据えている。


「最初の頃は話しくらいは聞いていた。けれど、それはすべておつねを怨み、憎み、呪いを解けという話ばかりだった。生前も人々に忌み嫌われていたのに、死んでまでその仕打ちだ。ひどいとは思わないか?」


春子のお父さんの意見にあたしは驚いてしまった。


あたしだって、おつねの顔が体に出てきて、怖くて絶望しておつねという人間を怨んでいた。


でもそれは仕方のない事だった。


突然呪いをかけられて生死に怯えているのだから……。


そこまで考えて、ハッとした。


生死に怯えていたのはおつねも同じじゃなかったか?
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