人面瘡
☆☆☆

春子のお母さんがいれてくれたお茶はとてもおいしかった。


普段飲んでいるものよりも、ずっといいものだと、あたしでも理解できるくらいだった。


池の鯉は優雅に泳いでいて心地よさそうだ。


それでも、この家にはずっと昔からの悲しみで溢れている。


春子のお父さんも、おつねの顔がいまだに見つからない事を知っているだろう。


しばらく待っていると、春子のお父さんが古いアルバムを持って来てくれた。


「このアルバムにおつねの写真がある」


そう言い、テーブルの上に広げて置いてくれた。


あたしと雄生はそれを食い入るように確認した。


白黒の写真が並ぶ中に、見たことのある女性の顔を何枚もみつけることができた。


それはおつねの幼い頃から始まり、徐々に成長していく過程がちゃんと納められていた。


けれど、おつねは成長するにつれて写真の枚数が減り、笑顔を見せなくなってきている。


とても綺麗な顔をしているのに、いつでも泣きそうに歪んだ顔をしているのだ。


それはおつねの悲鳴のように見えた。
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