人面瘡
指で触れている感触はやっぱりなかった。


傷ができた時は絆創膏で隠れる程度だったのに、いつの間にこんなに肥大化したんだろう。


そう思うと気持ち悪さが出て来た。


体調にはなんの変化もないけれど、こんな傷普通じゃない。


そう思いながら、あたしは薬を塗りはじめた。


ボコボコしている表面をなぞっていると、ふとそれが人の顔に見えた。


「ひっ」


と小さく悲鳴をあげて手をひっこめる。


1度顔に見えてしまうと、もうダメだった。


それは何度見ても人の顔に見えてしまう。


あたしはすぐに包帯を巻きなおしてベッドにもぐりこんだのだった。
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