人面瘡
人面瘡
そう言えば、昔お婆ちゃんに聞いたことがあったっけ。


青アザが人の顔のように見えると気があって、それは《人面そう》と呼ばれてるのだそうだ。


夜になっても寝付く事ができないあたしは、パソコンの前に座っていた。


どうせ眠れないのなら、その《人面そう》について調べてみようと思ったのだった。


あたしの知っている話の中では、あたしの膝にできている物が《人面そう》に近いものではないかと考えたのだ。


「結構有名な妖怪なんだ……」


調べてみてわかったことは、昔から語り継がれている妖怪だと言う事だった。


傷口にできた顔に薬や毒を飲ませることで退治することができるらしい。


でも、《人面そう》が本当にできたという話はどこにもなかった。


あったとしても、傷口が偶然人の顔に似ているというだけで、口を開けたり目を開けたりしたということはなかった。


普通に考えれば当然なことだった。


顔に似た傷が動き出すはずがない。


けれど、自分の身には確かにそれが起こっているのだ。


今でも、包帯の下で顔が動いているのがわかる。
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