校舎内鬼ごっこ
「ほらっ!顔赤いじゃん!熱あるんじゃね?」


そう言って今度は額に手を当ててこようとして、私は咄嗟にそれを防いだ。


「ないってば!」

私の気持ちも知らずに…もう!



そう…私は、翔に恋心を抱いていた。

いつから想いを寄せていたのかは分からない。

ただ、何も考えてなさそうなのに、今みたいにほんの少しの変化に気付かれたりだとか、ヤンチャそうに見えて本当はとても心優しい所だったりとか、私はずっと翔に惹かれていた。


そして、この想いは決して言葉には出さない。今も、きっとこの先も。

この居心地が良い、幼馴染の関係を壊したくはないから…。

だからこの気持ちは、私だけの秘密。




「おーい!沙紀!なにボーッとしてるんだよ、何かあったのかよ?」

まだ尚しつこく聞いてくる翔に思わず溜め息をつくと、私は重たい口を開いた。



「なんだか…怖い夢を見たんだよね」

「夢?」

「うん。真っ暗な闇の中で、ひたすら逃げるの。……何かに追われてて。結局、捕まっちゃったんだ」


思い出しながら話すと、再び悪寒がした。

思わずブルブルと体を震わせると、翔は背中を摩ってくれた。

すると、不思議なことに、体の震えが止まった。



「気にすんなよ。ただの悪夢だろ?大丈夫だって!現実にならねえし」


そう言ってニカッとえくぼを浮かばせ笑う翔に、強い安心感を覚え、救われる。
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