極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~
さっきマンションに到着した時、コンシェルジュの方に来客がある旨を伝えていたことを思い返しながら、それがまさかエンゲージリングを見せにくるブランドショップの方の訪問だなんて思いもしなかった。
慶太さんクラスのVIPになると、お店側が品物を持って訪れてしまうのかと、改めて別世界の出来事に驚愕していた。
持ち込んだ三つのケースを手早く広げて、次々と大粒のダイヤが輝くエンゲージリングを披露していく。
定番の形から、絶妙な曲線を描いたものなど、洗練されたデザインのリングが続々と並べられる。
エンゲージリングは、仕事柄日常的に目にしてきた。
だけど、それを自分のために眺めているということが、やっぱり不思議でならない。
「好きなものを選ぶといい。どれも、のどかの細くて綺麗な指に似合う」
ショップの方たちが目の前にいるのに、慶太さんは微塵も恥ずかしさを見せずそんなことをサラリと言ってしまう。
私が代わりに恥ずかしくなると、上品に微笑んだ女性の販売員の方が「気になるものをお試しください」と、声を掛けてくれた。